斉藤隆文(オル太)は、本展を「自分自身の立ち位置を確認する装置」として位置づけている。現在を逆照射することを主題に掲げて、家族やコミュニティといった親密圏からそこに潜む身体性や言語に着目して、歴史を語りの詩学として捉え直す表現活動を展開している。祖父から歌い聞かされた日露戦争に関する「しりとり歌」をきっかけにした「おぼろげな凱旋ス」展(2015年, Art Center Ongoing)を構成し直すかたちで、記憶を伝承する身体性や、歴史を語る技法をめぐって、3年越しに改めて迫っていく。具体的には、祖父母と私的な記憶の連関を重ねることによって生成されたオブジェから、同時代的な意味を投げかける。