| EN |

ジュリアン・オピー 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 12日

≪Antonia with yellow shawl.≫2008年 | Inkjet on canvas with ebonised pear wood frame | 120 x 83.9 cm | 画像提供:SCAI THE BATHHOUSE

ジュリアン・オピーは、人物のポートレイトを描き始めた1997年頃以降、10年以上に渡り数多くのポートレイトを描いてきました。最初は身近な家族や友人を題材に選んでいましたが、その後、アートコレクター達からの注文制作を受け、Blurやケイト・モス、F1レーサーなど著名人を描き、さらに様々なバックグラウンドの人々の顔と向き合うことを経て、徐々に作風に発展させ表現手法の上で新しいチャレンジを試みてきました。対象の特徴を簡潔に整理し、喜怒哀楽の感情も取り去ったニュートラルな顔を描きながら、それぞれの人物のリアルな存在感を感じさせるポートレイトのシリーズは多くの人々の共感を呼び、今ではアーティストの代表作というべきシリーズになっています。オピーはこれらのポートレイトをアニメーション作品にも発展させ、静止した人物像がまばたきを繰り返したり、軽く微笑んだりすることによって、鑑賞者に新鮮な驚きを与える「動く肖像画」ともいうべき新たな分野を確立しました。 一方、同じ人物像を対象にしながらも、顔の造作を捉えたものではなく、ポーズをとったり、歩いたり、踊ったりしている人体像を描いた「People =人々」というシリーズの作品も並行して制作してきました。こちらでは、同様に簡潔化された表現の中で、ダンサーの躍動感や、キャットウォークするモデルのしなやかな動きがペインティングとアニメーション作品の中でリアルに表現され、そのダイナミックな創造性に注目が集まりました。

これらの人物を主題とした作品以外にオピーは風景画も制作してきました。いずれのシリーズにおいても対象の様々な要素を簡潔に整理・単純化し、シンプルな色彩表現を用い、時に細部を大胆に強調することで対象に生き生きとした存在感を与えることに成功しています。その表現手法はアーティスト自身がリスペクトする江戸時代の二人の浮世絵画家、喜多川歌麿と歌川広重の二人に大きな影響を受けていると言われています。自らも浮世絵の収集家であるオピーは、ある時期から浮世絵に加え、17-18世紀のイギリスとオランダの肖像画の収集を始める傍ら、それらの作品の美術的言語を自らの表現に引用していくことに興味を持つようになりました。17-18世紀のヨーロッパの肖像画に特徴的な色調の重さや、人物の背景に風景を配した新しい展開が近作のポートレイトでは顕著になってきました。

今回の個展では、こうした新作ポートレイトを中心に、オピー自身「サロン風な」と表現する、美術館に代表されるパブリックな白い空間とは趣を異にする、少々閉じられた、クラシックでプライベートな雰囲気の空間構成の中で作品が展示される予定です。

また、ポートレイト以外には、歩く女性の姿のペインティングとアニメーションの新作を展示いたします。

全文提供: SCAI THE BATHHOUSE

最終更新 2009年 10月 16日
 

関連情報


| EN |