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西澤諭志:過視は不可視か
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 14日

画像提供:サナギファインアーツ copyright(c) Satoshi NISHIZAWA

カメラや写真を使って制作しているからには、私には、自分の見たものに対して、知りたい事やわからない事があるのだろう。ただ画像を見ること自体が目的ではないのだから、私には、カメラを持たずに、ただ立ち止まって肉眼で見る、という選択肢も、常に残されている。この選択の余地の分だけ、私の写真はズレている。

この時、実は、「写真か肉眼か」という選択問題ではなくて、「写真と肉眼の、二つの間にできた距離を計測せよ」という計算問題が提示されている事に気付かなければいけない。この距離を計算するには、「写真」「肉眼」、どちらも単なる「x」「y」、という記号に過ぎない。二者択一で迷っているうちは、「x≒y」程度の情報しか導きだせないままだ。だから「z」あるいは、「+」「-」「×」「÷」が必要になる。ただ、この計算の難易度を、私は知らない。

ひとまず写真は増え続けていくだろうし、その度に距離を計測し直すのだろう。

結局、答えが、写真の中に写ったりする事はない。

- 西澤諭志

西澤諭志は2007、2008年のキャノン新世紀にて佳作を受賞、本年5月にはINAXギャラリーにて東京での初個展を開催し好評を得た期待の若手アーティストです。身近に横たわる「ありふれたもの」を撮り続ける西澤は、どこにでもあるような均質的な日常空間のわずかなズレや歪みを独特の手法で切り取ります。画面から漂って来るイメージはアイロニカルで内省的ではありながら、決して近視眼的ではなくむしろのびやかな空間を獲得しています。今回の個展は新作を含む10点の写真作品により構成されます。

西澤諭志略歴
1983年長野県生まれ、現在山形市に在住。
2008年東北芸術工科大学情報デザイン学科映像コースを卒業。2007・2008年のキャノン写真新世紀にて佳作を受賞。

全文提供: サナギファインアーツ

最終更新 2009年 10月 31日
 

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