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松浦澄江:ベルリンの水族館ー南への憧れ
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2018年 3月 04日

松浦澄江 ベルリンの水族館ー南への憧れ 2018 Size:230×460mm Medium:銀箔、岩絵の具、和紙

タイトル「ベルリンの水族館—南への憧れ」について

2017年10月ドイツの幾つかの都市を訪れた中で、美術以外の現地の人々の思考や感覚も知りたいと思い、ベルリン滞在では中国風の門を持つドイツ最古の動物園へ行きました。園内に古い立派な水族館があり、中に入ると一つ一つの水槽の中の生き物の色の取り合わせも美しく、緑陰で泳ぐカメたちの伸びやかな肢体を下から仰ぎ見ると、竜宮城へ行った浦島太郎のような心持ち。そして、私自身は色々な生命が蠢く遠くの南の島から来た人間なのだと思いました。日本の現代的で単純な水族館とは異なり、ここは一時代前の広かった地球の、北の国の憧れの美意識で彩られた楽園、そこが人間的で懐かしい世界でした。


#作品の表現について(素材:日本画絵の具・銀箔・膠・和紙)

日本の画材から生まれた表現で、世界共通の現代の作品を作ることを考えています。平面・立体・光と色々な在り方の作品をこれまで制作してきた中で、今回はツム・アインホルンというドイツ料理店でのお客様の感覚も考えて、抽象的な形態の中に水や魚の動きが感じられる作品群を展示しました。元々シンプルな紡錘形は折に触れ表現に取り入れていた形態ですので、揺らぐ箔の線との関係性は自然ではないかと思います。箔の作品の興味深いところは、鑑賞者が動くことで反射が変わり世界が変化して見えることです。ですから箔の上の白い紡錘形も魚の煌めきのように動き出します。私のとても好きな彫刻家ブランクーシは「魚の動きを捉えたかった」と言って、薄い楕円形のような石彫を、円形(20cm厚x直径約1m)の石の台座の上に展示しました。鑑賞者が台座に沿って知らず知らずにその周りを回り、正面から見た時薄い魚の顔のような形がちらりと。動画という手段ではなく、動かない作品を動く作品に転換するのには人間と表現とに対する深い洞察が必要で、私にとっての永遠の課題と思っています。

https://www.zum-einhorn.co.jp/traube/art/artforum.html

全文提供:望月 瞳 (作品説明部分:松浦 澄江)


会期:2018年3月1日(木) 〜 2018年4月28日(土)
時間:11:30-15:30, 17:00-22:00
休日:日曜・祭日 3/31, 4/7
会場:Zum Einhorn(ドイツレストラン ツム・アインホルン、東京都港区六本木1-9-1六本木ファーストビル地下1階)

最終更新 2018年 3月 01日
 

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