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Transfer Guide
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2017年 10月 20日

加藤 巧 《Panorama #1》 木材、亜麻布、石膏地、卵黄、乾性油、アクリル樹脂、顔料 20.0 x 91.0 cm 2017 [本展出品予定作品]

トーク|
11月11日(土) 17時30分~19時 鈴木 俊晴(豊田市美術館 学芸員)、加藤 巧、前谷 康太郎
12月23日(土・祝) 16時~17時30分 加藤 巧、前谷 康太郎

* * *

このたびthe three konohanaでは、新旧の絵画技法の研究を基に、絵画のあり方を捉え直す作品を制作する加藤 巧(Takumi Kato, b.1984)と、現象としての光を素材とした映像作品を軸に表現を展開する前谷 康太郎(Kotaro Maetani, b.1984)の二人による展覧会「Transfer Guide」を開催いたします。

本展では、「Transfer」という言葉を起点に、これから先の表現を考えるための造形・制作の方法を導いていくことを狙いとします。「Transfer」の語源は、「向こうへ(trans-)運ぶ(ferre)」というラテン語に由来しています。物質の移動だけに留まらず、概念から時代・時間など、作品制作において検討すべき様々な要素を多角的に捉えると同時に、それらを理に適うように結び付けることのできる効果的なキーワードと位置づけます。

本来、芸術の表現は、私たちの現実世界を構成するあらゆる物事から、素材となる対象を選別・抽出する行為と、これらを作品として変換していく行為が、作家自らが設定したルールに基づいているものと言えるでしょう。加藤は、水彩で描いた自らの筆致を卵テンペラの技法で描き直すことで、絵画の制作行為の本質へと迫る作品を制作しています。一方で前谷は、自然・人工に関わらずあらゆる光を自作装置に経由させることにより、映像と人類の根源的位置関係を抽出するかのように映像作品を成立させています。二人の制作プロセスからは、過去と現在それぞれの技術および素材への向き合い方を並列させることで、現代における制作の方法論を拡張させようとする意志が強く見られます。本展では、加藤は近年から取り組んでいる卵テンペラによる絵画作品を、前谷は初めて取り組むUVプリンターによる写真作品を、それぞれ新作にて発表します。

加藤と前谷の二人が本展で指し示すものは、無尽蔵に表現の選択肢が広がるいま現在の状況から、何を選択するべきかの基準を作家自らが自覚を持って取り組むべきであろうという提言と言えるでしょう。ただ時流に任せた表層的な表現に頼るのではなく、先人から学びつつ、いまの技術や価値も受け入れて、過去と現代の双方を等価に捉える姿勢で本質的なものに立ち返ることが、表現の未来を見い出すための一つの指針と考えます。二人の表現を通じて、いまだからこそ考えるべき制作への姿勢とプロセスについての議論が深まる契機になれば幸いです。

なお本展期間中には2つのトークイベントを実施し、いまの表現と言語・論理との接続の関係についても考える機会になればと思います。ぜひこの機会にご高覧賜りますよう、よろしくお願いいたします。

http://www.thethree.net

全文提供:the three konohana


会期:2017年11月11日(土) 〜 2017年12月24日(日)
時間:12:00~19:00
休日:毎週月・火・水曜、11月16日(木)~18日(土)
会場:the three konohana

最終更新 2017年 11月 11日
 

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