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勝又邦彦:Skyline
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 04日

画像提供:勝又邦彦 copyright(c) Kunihiko kATSUMATA

都市の中にありながらも、それを少し引いたところ−多くは高台−から眺めてみる。
すると、自然の稜線ではなく、人間の営みがつくり出した稜線が見えてくる。
都市の内側で渦巻きうごめいている人々の欲望が、地面を這いずり、とぐろを巻き、あるいは深く澱のように沈澱し、たゆたうともなくたゆたって、長い時間を経ながら少しずつ空に向かって、光に吸い込まれるようにゆっくりとした上昇を続けてゆき、少しずつ少しずつ何かに洗われるように、空に溶けていくように見える稜線だ。
そのとき僕は、人の欲望や悪意や嫉妬、黒々とした情念や邪念と、建設的な意志や想像力と献身研鑽の努力、そういった都市にまつわる全てを祝福したい気持ちにかられる。
日本においてこの線のほとんどは、この60年あまりの歳月の中で形作られてきたものであり、今も日々移り変わっている。
そしてそれが一瞬にして−天災、戦乱その他の暴力、あるいは新たな都市計画によって−崩れ去り、改変を余儀無くされることも今後あるかもしれない。
しかしこの線のどれもが欠けてはならないと思うのは、死すべき運命をもつものの感傷なのだろうか。
それにしても、一体どこまでが地でどこからが空の領分なのだろう?
- 勝又邦彦

このシリーズは2001年の911事件を契機に開始され、国内外での撮影と発表を重ね、進行中である。

勝又邦彦 プロフィール
早稲田大学法学部卒業、インターメディウム研究所修了。
大学在学中より絵画、写真、映像などの作品制作を始める。国内外で様々な職業に従事した後、作品発表を開始。多様な被写体のもとで「時間」「光」「場所」などをサブテーマに、常に写真の構造に触れるコンセプチャルな作品展開を続けている。主な展覧会に「Photography 写る、写す 7 人の現代作家」(大阪府立現代美術センター、2001年)「風景の余白に:写真」(東京日仏学院、2002年)「写真の現在2 —サイト— 場所と光景」(東京国立近代美術館、2002年)「Natura Morta 」(Leica gallery Solms、2006年)など。主な受賞に「さがみはら写真新人奨励賞」(2001年)、「日本写真協会新人賞」(2005年)。東京国立近代美術館、サンフランシスコ近代美術館など国内外の主要なコレクションに作品が収蔵されている。

全文提供: 勝又邦彦

最終更新 2009年 10月 02日
 

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