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コバヤシ麻衣子:Vale of Tears
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 11月 24日

≪Untitled≫2009年|約60~70mmx50~60mm|色鉛筆、クレヨン、アクリル絵画、ジェッソ、新聞紙など|画像提供:hpgrp GALLERY東京 copy right(c) Maiko KOBAYASHI

イギリス・ニューカッスルの留学から帰国後初となる、コバヤシ麻衣子の新作展。 コバヤシは犬にも羊にも、場合によっては人にも見える、少しうつむきがちな生物を用いた平面作品を中心に制作してきました。どう見てもおとなしく、肉よりは草を食べていそうなその生物は、感情を読取るにはあまりに情報が少ない表情や仕草で佇んでいます。何を言いたいのか、何を考えているのか、画面の中にヒントを探るうちに、読取れる感情よりもその生物の空気感そのものが重要な要素であると感じ始めます。直接的で短絡的な感情や情報に囲まれる私達に、その生物は何かゆっくりとした気配を送って来ているようです。

かたちなく消えては来る'今日'を生きてきた。
自由自在にかたちを変える気まぐれな感情とともに、今もその'今日'を生きている。
私は絵を描くことで、日々変形する感情を無作為と対話によって表出させ、私たちの世界に存在させることを試みている。
-コバヤシ麻衣子

コバヤシ麻衣子「Vale of Tears」展によせて
本当に悲しい時には涙は出ないものである。さらに動物でも人間でも言葉ではない独特のコミュニケーションによって、悲しみが伝わってくることがある。コバヤシ麻衣子の作品にも悲しみと孤独が漂っている。世の中全体がポジティブ思考に向かう時、コバヤシ麻衣子のささやかな悲しみと孤独は信用できるものだと思う。イギリスの冬は長く、物事を考えぬくのに向いている。イギリス滞在中に灰色の空を眺めながら、コバヤシ麻衣子は自分のやるべき道の標を探してきたのだ。そのことを、じっくりと聞いてみたいと思う。おそらく絵画から聞こえてくるはずである。
-ゲストキュレーター:山口裕美

※全文提供: hpgrp GALLERY 東京

最終更新 2009年 10月 30日
 

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