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青木克世:maniera
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 9月 23日

≪Predictive Dream IX≫2009 年|ceramic and porcelain|38×32×18cm|画像提供:レントゲンヴェルケ copyright(c) Katsuyo AOKI

私の芸術表現における手法は、陶という素材を用い、多様な装飾様式や文様などによる具体的または抽象的な彫刻、または陶に彩色、焼き付けされた絵画によって成り立っています。

そして私の作品はしばしば視覚的に、それぞれにおとぎ話や神話など幻想的な物語性、または儀式的な崇拝の対象のような感覚を呼び起こさせるかもしれません。

私が芸術表現に於いてこの表現方法を用いるのはこの陶という素材の要素である脆さや壊れやすさ、繊細さなどが醸し出す危うい緊張感と現代に於いては過剰とも思える装飾的表現が、私たちが生きるこの時代の精神性に何か共通する危うさを感じるからです。

しかしながら私にとっての芸術表現はとても個人的な側面を持っており、私の作品は私個人の夢想や空想のイメージの増殖の結果であるかもしれません、つまり私にとって芸術表現とは制作をすることによって自分の心の奥へ降りて行き、そこに眠っている私の影と出会う行為、または幻想や夢、畏敬や畏怖の念との対話、それは言葉を換えればとても神秘的な体験と言えるかもしれません。

私の、そして私たちの生きるこの時代が、科学技術や文明という光に照らされるほどにそれらの影はより色濃く心の奥底にその輪郭をはっきりとさせるからなのかもしれません。

青木克世

2006年に六本木ヴァイスフェルトで開催された「アールエックス・キューブ・キュービック」にはじまった、レントゲンヴェルケにおける青木克世の作品発表が、愈々個展という形に結実します。

工芸と美術の境目を軽々と飛び越え、無条件の驚きと感動を呼び起こす彼女の作品は、その発表の度に熱狂を持って迎えられてきました。陶土によるものとは思えない、しかし陶土でなければ為し得ない、超絶技巧による精緻な造形。ご期待下さい。

全文提供: レントゲンヴェルケ

最終更新 2009年 11月 06日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


つるりとしたタイルとは対照的にその上になされるゴシック的な過度の装飾や、単体で制作される髑髏。素材が陶土であることも手伝って、青木の作品は工芸的に見えるかもしれない。しかし「工芸」の基準を実用の途に適うか否かと捉えれば、青木の作品は「工芸的」ではあるが「工芸」ではなく、そのようなジャンル分けの些末さを感じさせてやまない。作品としての完成度の高さもさることながら、見せ方も秀逸。階段を上がり二階に足を踏み入れた瞬間の緊張が、ギャラリーを出るまで持続した。


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