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高石晃「地下水脈」
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2016年 6月 09日

高石晃「逆ロールシャッハ」 2016年、インク、ジェッソ、カラー帆布、木枠、カットアウト 1622×653mm

Maki Fine Artsでは、2016年7月2日(土)より、高石晃 個展「地下水脈」を開催します。

高石晃は1985年神奈川県生まれ、Maki Fine Artsでは今回が初めての個展となります。
ねじれ、うねるように描かれた線や、真っ二つに引き裂かれた紙、階段やテーブルの遠近感を生かした構図が高石の作品の特徴で、空間が捻じ曲げられたような暗示的絵画を作り出してきました。
本展で発表する新作ペインティングは、キャンバスを切断、穴をあける等の手法により、断面と輪郭が強調され、イメージと物質の境界を横断する、新たな展開を試みています。是非ご高覧下さい。

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「破産/幽閉」
森啓輔(ヴァンジ彫刻庭園美術館学芸員)

紙は引き裂かれ、キャンバスには穴が穿たれ、木製パネルは縦に寸断され、四辺は歪曲しながら切断される。近年の高石晃の絵画は、あからさまなほど毀損的だ。こういってよければ、それらは絵画でありながら、絵画としてほとんど破産しかけている。
白の背景に黒いインクの線が稠密する画面には、階段や木目調の床と壁がたびたびモチーフとして現れる。そこでは余白を輪郭にもつ線が、縦横無尽に画面をかき乱すことで、線遠近法と明暗法という西洋絵画史の制度に従属しかけていた空間は変調をきたしている。支持体に加えられる昨今の毀損的な行為もまた、外部から闖入する特権的な線と等価な変質を生成することにおいて意味をもつだろう。外在的な制作行為へのシフトは、高石の絵画がイメージとの共犯関係に手を結びながらも、あるかなしか、つまり0と1の狭間において、眼前の存在を問うていたことを仄めかしている。
高石の作品において、眼差しは線がもつ誘引力に囚われ、抗うことができない。そして画面の奥へと導かれた私たちの眼差しは、物質的変成を著しく被った画面の中に、その時すでに幽閉されてしまっている。この視覚の囚われの持続において、高石の絵画は絵画として存在し続けることが、かろうじて許されている。

http://www.makifinearts.com/jp/exhibitions/takaishi_2016.html

全文提供:Maki Fine Arts


会期:2016年7月2日(土) 〜 2016年7月24日(日)
時間:12:00 - 19:00
休日:月・火・祝祭日
会場:Maki Fine Arts(〒162-0802 東京都新宿区改代町4 黒川ビル1F)


最終更新 2016年 7月 02日
 

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