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成清美朝:temptress
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 9月 13日

≪Couples Ⅰ≫2009年|530x460mm|Acrylic, oil pastel and modeling paste on canvas|画像提供:unseal contemporary copyright(c) Misa NARIKIYO

成清は、ヨーロッパや日本の古典絵画を蟻形状のドットで再現する方法で制作を続けてきた特異な作家です。この方法には作家が作品を見る者に仕掛けた幾つかの戦略が伏在しています。

一つは、静止し、死せる古典絵画を、連続して繋がり、あたかも生きて動いているかに見える蟻のドットで構成することで今に蘇らせようとする試みです。

二つは、そうして再構成された画面の対象(人物であったり、静物であったり、風景であったりしますが)が、生の象徴であると同時に、生を侵食する死の象徴でもある蟻によって縁取られていることで、生と死が連続していることを示唆することです。

三つめは、人間を含め生けるものすべて(自然と言い換えられますが)が、たとえ全体として静止的に統一しているように見えても、実は微細な部分によって構成されていて、かつそれらの部分が互いに接合、連結することで常にエネルギーが交換され、生と死が反復されることで現在の生が成り立っているというパースペクティブを与えることです。これらの戦略は、一言でいえば、絵画の再構成(デコンストラクション)に向けられているのですが、それは作家が絵画の力をなお信じているからこそです。

遠目ではただの古典の模写と見させながら、近寄ってよく見ると、画面すべてが蟻のドットで構成されていることが分かり、動と静、生と死の同時存在で画面が揺らいでいることに軽いショックを受けるわけですが、これこそが作家の狙いです。すでに実績を積んできている成清ですが、本展は私たちでの初個展となります。新作ではさらに作品密度が高くなっています。どうぞご期待ください。

作家略歴
1975 福岡生
1998 九州産業大学芸術学部美術学科絵画専攻卒業
1999 九州産業大学芸術学部美術学科研究生修了
2003 東京芸術大学大学院美術研究科造形学美術教育専攻 修了
2004 東京芸術大学大学院美術研究科造形学美術教育博士後期課程退学
2004~2007 東京芸術大学大学院美術研究科美術教育研究室教育研究助手
現在 東京芸術大学非常勤講師  1995 新日鐵飛幡展
1996 新日鐵飛幡展
1998 九州産業大学卒業制作展 <買上賞><ブロンズ賞>、大野城まどかぴあ版画展(大野城まどかぴあ)、「Connections」展(ペンシルバニア大学 アメリカ)
1999 全国大学版画展(町田市立国際版画美術館)<買上賞>、個展(アートスペース獏 福岡)
2002 東京芸術大学 学内奨学金 <安宅賞>、 個展「ANTS」(アルファ表参道 東京)
2003 東京芸術大学修了制作展 <サロン・ド・プランタン賞><杜の会特別賞>、第32回瑠玻展(福岡市立美術館)<鶴甫賞>
2004 個展(フタバ画廊 東京)、「カフェ・イン・水戸2004」(水戸芸術館) 、ジョール国際アーティストシンポジウム(ジョール市立美術館 ハンガリー)、第19回アジア国際美術展(福岡アジア美術館 他)
2005 個展(フタバ画廊 東京)、「Sの心象評論 vol.5 gallery Review 作家展」(アートスペース羅針盤 東京)、個展(画廊 編 大阪)
2006  Aランチ(六本木 アクシスアネックスギャラリー)、個展(INAXギャラリー2 東京)、「福田尚代×成清美朝」展(Gallery≠Gallery 東京)
2007  New Year Show (Gallery≠Gallery 東京)、個展「漠景」(Gallery≠Gallery 東京)
2009 unseal collections 2009 ( unseal contemporary 東京) CIGE出品(北京) パブリックコレクション
九州産業大学、町田市立国際版画美術館、ジョール市立美術館 (ハンガリー)

全文提供: unseal contemporary

最終更新 2009年 9月 04日
 

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