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The Road Not Taken
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2015年 11月 20日

小沢剛 新なすび画廊-小沢剛 2010

MISA SHIN GALLERYでは、11月27日(金)から2016年1月30(土)まで、ギャラリーアーティストによるグループ展「The Road Not Taken」を開催いたします。

有史以来、アートは私たちを取り巻く社会の状況に深く関わり、その社会を反映する装置の役割を果たしています。アーティストは、地球上に起こるさまざまな問題を目の当たりにし、制作の現場をスタジオの中だけに限定せず、アートという手法を用いて解決のてがかりを示唆し、また新しい視点を提示してきました。それは多くの場合、これまでだれも試みてこなかった方法に挑むことでもありました。

アイ・ウェイウェイによる、Hanging Manは、1980年代にアイが過ごしたニューヨークで制作した、針金ハンガーをまげて作ったマルセル・デュシャンの横顔がモチーフになっています。デュシャンの男性用小便器「泉」にちなみ土台を陶製にし、ありふれた針金ハンガーをシルバーにすることで、アイは、実践や理論ではなく、ちょっと見方を変えるだけで世界はちがって見え、違った結果を導きだすことができると述べています。

小沢剛のなすび画廊は1993年4月、世界最小の移動式画廊として、数多くの画廊が並ぶ東京、銀座で、老舗貸画廊「なびす画廊」前の路上でオープンしました。牛乳箱の内側を白く塗ることでホワイトキューブに見立て、アーティストに有料でスペースを貸し出す貸画廊という日本独特のシステムへの疑問を呈しています。小沢は画廊主となり、これまでに200人を超えるアーティストに展示の機会を提供し、さまざまな場所で展示を行っています。

ケン・ラムは、社会における、絶え間ない文化的変容とその変容によって形作られていくアイデンティティーを、サインやビルボード、ロゴなどマスメディアにあふれかえる視覚的な言語を用いた作品で表現するアーティストです。PARVIはアラビア文字を併記し、イスラム教の教えに沿ったハラルフード店の看板ですが、広告のメッセージには不釣り合いな宗教的な文言、PRAISE BE TO ALLAH(アッラーを讃えよ)を挿入することで、グローバル化する世界における生活の中での緊張感をあぶり出します。

東松照明は、米軍基地や、長崎、沖縄など最も社会的な対象をテーマとし、戦後の日本を見つめ続けた、日本を代表する写真家の一人です。長崎の原爆投下による熱線で溶解して曲がりくねったガラス瓶は、焼けただれた人体の一部のような様相を呈しています。原爆投下からすでに16年の歳月が経過して撮影されたこの作品で、東松は、それまでの原爆の遺物が表象してきた固定的な意味をすり抜け、歴史の暴虐無人に対してイメージの力で応えようとしているかのようです。

年代もバックグラウンドも異なる4人のアーティストの作品は、The Road Not Taken(選ばれざる道)を選択し続けることで、さまざまな問題を抱える社会に生きる私たちに、アーティストに何ができるか、アートの意味とは何か、可能性とは何か、また役割とは何かを問い続けているようです。

アイ・ウェイウェイ AI Weiwei
1957年北京生まれ。78年前衛芸術グループ「星星画會」を共同設立。81年から93年までニューヨークに在住。帰国後、北京を拠点にアーティスト、キュレーター、建築家、デザイナー、批評家、またアクティビストとしても活動する。

ケン・ラム Ken LUM
1956年バンクーバー生まれ。日常を取り巻く社会構造への批評的な視点とアイロニカルなユーモアを持った作品は、写真、彫刻、ペインティング、インスタレーションと多岐に渡る。カナダを代表するアーティストとして、ドクメンタ11(2002年)など多くの国際展に参加。

小沢剛 OZAWA Tsuyoshi
1965年東京生まれ。時代や歴史を見つめ、しなやかな感性と創造力で、ユーモアと機知に富んだ作品で知られ、ヴェネツィア・ビエンナーレをはじめ海外の展覧会にも数多く参加。現在、資生堂ギャラリーにて個展「The Return of Painter F」を開催中。

東松照明 TOMATSU Shomei
1930年–2012年。戦後の日本を代表する写真家。1950年代から数々の作品を発表し、近年の写真家に多大な影響を与えた。「Shomei Tomatsu: Skin of the Nation」サンフランシスコ近代美術館(2004年)、「写真家:東松照明全仕事」名古屋市美術館(2011年)などの個展が国内外で開催されている。

http://www.misashin.com

全文提供:MISA SHIN GALLERY


会期:2015年11月27日(金) 〜 2016年1月30日(土)
時間:12:00-19:00
休日:日月祝、12/27-1/4は休廊
会場:MISA SHIN GALLERY

最終更新 2015年 11月 27日
 

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