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武田敦子 展
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2015年 7月 01日

(c) TAKEDA Atsuko

「視覚化された生命の躍動」 武田敦子の作品について 武田敦子の作品には、空気中ではなく液体の中に生物が生息しているかのような情景がひろがり、植物の実や花や茎と思われるかたちが、動物のような感触を有するように描かれています。身体の底にある何かが呼び覚まされるように感じ、描かれている世界と共振してゆきます。

いつかわからない、どこか遠いところの景色として見ることもできますが、今ここにある世界としても感じられます。イメージとしての始原世界が喚起されて、そこに私たちがいるという感覚に陥るのです。全ての規範的な見方から解放されて、ひたすら自らの生命エネルギーに導かれて描かれたような印象を受けるでしょう。

作品には幸いにも、構築的な世界観やメッセージを伝えようとする意図は感じられません。目の前に、単に、「きれい」、「明るい」、「カラフル」という言葉では言い表すことが出来ない配慮の行き届いた総合的な色彩があります。自然なグラデーションを施された様々な色調も見事です。その色っぽい色彩に、身体がゾクゾクすることでしょう。

武田敦子が描く絵は画家によって想像された世界で、「現実にはありえない」ように見えます。武田に聞いてみたところ、「キダチアロエやオーロラや苔の中に生えていた多肉植物などは、(私の)家の庭や部屋にあって身近に観察できるから描いた」ので、それらは「強い生命力を持ち、花の咲き方が独特で特別に面白かった」と答えてくれました。「モチーフから触発されたイメージが逃げて行かないように頭の中に保ちながら、面白くなるように、自由にディフォルメします。」と語ります。描くことで自分が存在していることの実感を持ちたい、という意識が伝わります。

想像力がもたらすイメージの世界にこそリアリティがあるので、武田にとって描くことは生きていることの確認行為でもあり、それで自分の生の実感を持ちたいという意識が強く働いているように思えます。面白くするためにモチーフをディフォルメしながら自分が描く世界に魅力を感じ、描かれている存在の肌触りに満足しているに違いないと思われます。

武田敦子の作品を観る事は、同時に、私たちが自分の中に作品を作ることにもなり、歓びに伴われた新たな生を経験するという感覚を得ることにつながるので、今後の彼女の作品がどのように展開してゆくのか、期待を持って注目してゆきたいと思います。

武田敦子 プロフィール

略歴
1985年 広島県尾道市生まれ
2009年 京都造形芸術大学芸術学部洋画コース卒業
2011年 京都造形芸術大学大学院芸術表現学科修士課程修了

個展
2008年「Atsuko Takeda solo Exhibition」HaloGalo、京都
2014年 銀座スルガ台画廊「2014年新人選抜展―武田敦子 個展」

グループ展
2008年「Rainbows」海岸通ギャラリーCASO、大阪
2009年「京展」京都市美術館、京都 「俺たちのマニフォールド」海岸通ギャラリーCASO、大阪
2010年「DeepFlat」Gallery i 、京都
2011年「アートアワードトーキョー丸の内」行幸地下ギャラリー、東京 「Emerging#1」3331Arts Chiyoda,東京

受賞歴
2009年 京都造形芸術大学卒業制作展 学科賞
2011年 京都造形芸術大学大学院修了制作展 エマージング賞

http://www.arte-gallery.com

全文提供:アルテギャラリー


会期:2015年6月29日(月) 〜 2015年7月10日(金)
時間:11:30-18:30
休日:7月5日(日)
会場:アルテギャラリー(京都市中京区丸太町通柳馬場183番地 オーズビル1階)

最終更新 2015年 6月 29日
 

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