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ヂョン・ヨンドゥ:地上の道のように
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2014年 11月 04日

Six Points、2010年、ヴィデオ

韓国を代表する現代美術作家、ヂョン・ヨンドゥによる大規模な個展で す。1969年生まれのヂョンは、2007年には韓国の国立現代美術館が主催す る賞「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に史上最年少で選ばれ、2008年 にはニューヨーク近代美術館で個展が開催されるなど、国際的に高い評価 を得ている現代美術作家です。
ヂョンは写真や映像を媒介に、被写体とコミュニケーションを重ねなが ら作品を制作しています。子供から老人まで、一般人を被写体にしたり、 彼らの記憶や未来の夢、幻想をモチーフに制作された作品は、ひとびとの 夢や希望を描きだすと同時に、それらを達成することが難しい現実世界の 姿も逆説的にあぶり出します。
キャリアの初期に、ヂョンは日本で出会った人々や風景を題材に作品を 制作しています。その中のひとつである写真作品〈奥様は魔女〉(2001-) は、ヂョンが各国で出会った人々に未来の夢やファンタジーについてイン タビューをおこない、それらのイメージを写真で視覚化した作品です。こ のシリーズの中に登場するモデルのひとりは、当時水戸の高校に通ってい た男子学生でした。この水戸の男子学生をモデルとした作品は2002年に制 作されています。それから12年後に開催される本展をきっかけに、ヂョン は久しぶりに水戸の人々と関わりながら新作を制作しています。
本展では、さまざまな国からの移民が地域ごとに暮らす街の特性を活か して制作された映像作品〈Six Points〉(2010)、見慣れた街の風景を映画 の中のような異世界に変化させる映像のトリックを応用した〈日常の楽園〉 (2010)、鑑賞者が映画の中の登場人物になった気分を味わうことができる 体験型映像作品〈ドライブ・イン・シアター〉(2013)といった作品を通し てヂョンの活動を紹介します。これらの作品に加え、ヂョンが水戸で出会 った盲目のマッサージ師、白鳥建二が撮影している写真をもとにした映像 作品、韓国を代表するマジシャン、イ・ウンギョルやジャズピアニストの 小曽根真とコラボレーションした、水戸の街角を舞台に色々なハプニング がまきおこる映像作品、新世代ゴーグル型3Dデバイスで鑑賞する体験型 の新作が展示されます。
ヂョンは夢や理想と現実、過去と未来のように相反する要素を写真や映 像の中で統合する一方、写真や映像といった媒体が、肉眼では見逃してし まう現実を浮き彫りにする機能を持っていることに注目しています。また、 一般人を映像や写真の登場人物とすることで、映像や写真で表わされるフ ィクションの世界が、実は私たちの日常生活の延長線上にあることを示唆 します。そしてスペクタクルなイメージや、写真や映像の虚構性が人々の 注意力や心の動きにどのように作用しているのか、考察を促します。中国 の文学者、魯迅による短編小説「故郷」の一節から展覧会のタイトルを引 用した本展は、新しい視覚体験やウィットにとんだ映像作品を通して記憶 と忘却、希望の意味を問いかけます。


全文提供:水戸芸術館現代美術ギャラリー
会期:2014年11月8日(土)~2015年2月1日(日)
時間:9:30 - 18:00(入場17:30まで)
休日:月 ※年末年始2014年12月27日(土)~2015年1月3日(土) ただし11月24日(月・振)、1月12日(月・祝)は開館、11月25日、1月13日(火)休館
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
最終更新 2014年 11月 08日
 

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