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万代洋輔:RADICON
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 9月 02日

画像提供:ヒロミヨシイ

万代洋輔は写真を主たる媒体として、静謐かつ奇矯な現実界への道筋を提示する。この80年生まれの「写真家」が、その表現物を特異な世界の断片とし、それがかつてあった自然的世界の想起を払拭させるほどの誘引力をもつのは、作家自身の厭世的な性向にのみ由来するのではない。万代の写真にうつされたものは、自然物であれ、人工物であれ、それがかつてあった世界の連関から切り離され、再生のときを待つ光の骸のようである。多くの写真家がフィルムに光を透過させることに終始するのに対して、万代はフィルムの中で光を補足し、監禁状態にする。こうして、かつてその形象を固着させた現象としての光は剥ぎとられ、物自体としての光が立ち現れる。「そとき」を待つことが、この作家の制作の瞬間なのである。おそらく写真家としてはこの作家のみが取りうるような光に対する埒外な態度が、写真という表現手段の可能性を押し広げているとも言えるだろう。 写真という光学装置を用いる者がみなケミスト(化学者)に他ならなとすれば、万代はただ一人アルケミスト(錬金術師)であるかのように、写真のエリクシールを解放しようとするのである。 hiromiyoshiiでは2007年の『reunion』以来、万代洋輔の二回目の展覧会となる本展では、トーキョーワンダーサイト渋谷での『Hello! MIHOKANNO』展にて好評を得た作品シリーズの延長線上で、万代洋輔が到達しようとする表現の極限が、新作を含めて展開される。

万代 洋輔
1980年島根県生まれ。東京在住。アーティストグループ、ミホカンノのメンバー。主な個展に、ヒロミヨシイ「reunion」、バンカート・スタジオNYK 「High atomospheric pressure↑」。主なグループ展にダイチ・プロジェクツ「After the Reality 2」(ニューヨーク)、ファッションブランド、エトロの設立40周年を記念した「ETRO ART CIRCUS」、トーキョーワンダーサイト「SECRET PHANTOM II」「Hello! MIHOKANNO」など。

全文提供: ヒロミヨシイ

最終更新 2009年 9月 05日
 

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