飯田昭二:「幻触」の先にあるもの |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2014年 7月 25日 |
飯田昭二は1927年に静岡に生まれ、中国奉天の工業学校を卒業後に帰国し独学で絵を描き始めました。その後、さまざまな美術家たちと交流をしながら、前衛的な作家たちの舞台となった読売アンデパンダン展に出品(1954年~58年)、また美術評論家の石子順造との出会いを通して活動の幅を広げ、非タブロー主義へと移行していきます。1966年から清水、静岡を拠点に活動する作家で構成されたグループ「幻触」の中核的メンバーとして活動(1971年頃まで)し、グループ幻触展(1967年 静岡県民会館)や伝説的な展覧会「トリックス・アンド・ヴィジョン―盗まれた眼」(1968年 東京画廊・村松画廊)などで発表。「見ること」と「在ること」の間にある矛盾、そこから生まれる「虚」と「実」を、鳥かごと鏡を用いたトリッキーな作品「Half and Half」のシリーズなどで提示し注目を集めました。その後も 山で木を縦半分や横半分に切り、半分は山に残し、半分は展示会場で展示する(1969年「トランスマイグレーション」)など独創的な作品の数々を発表。高松次郎や後に「もの派」として知られる李禹煥、関根伸夫などの先駆的な創作活動が拮抗するなか、飯田昭二もまた、日本現代美術の大きな転換期を担った重要な作家の一人と言えます。そして近年、2005年の「幻触」展(鎌倉画廊)をはじめ、「石子順造的世界」展(2011年 府中市美術館)、「グループ『幻触』と石子順造1966-1971」展(2014年 静岡県立美術館)での展示など「幻触」の活動や飯田の足跡への再評価が高まっています。今展では、「Half and Half」シリーズ(再制作を含む)や、「Paper」と書かれ丸められた紙が積み上げられた1969年「現代美術の動向」展(京都国立近代美術館)出展作の再現、80年代の鉄の立体作品、写真などに加え、日本人としての民族的・歴史的な自分と“出会う場”を求めて長年向き合ってきた「紙」に描かれた作品を80年代作から近作まで展示致します。飯田は、「『幻触』(の活動初期)の時には“見る”行為によって“騙される”という体験を作品で提示したが、ものが“在る”ことや絵に“成る”こと、物質という意味でなく何某かの“もの”と“もの”との出会いについてもう一度考えようとした」という思いや「絵具で塗りこめられる西洋の支持体と異なり、“紙”という物質が“絵”になるとき、その成り方・関係性に紙の別の“現れ”が生じ、それを絵という。紙は紙であり続け、“そこはかとなく”ある」という視点の元、、根源的でありながら新たな視線を向けた試みを繰り返し、「幻触」以降の作品群を生み出しました。飯田昭二の名を知らしめたトリッキーな作品や日本現代美術発展の軌跡を垣間見るコンセプチュアルアート、そして自然や物質に対する飯田独自の根源的な感性と視点が反映された作品群、あわせて20数点を一堂に集め、「幻触」を経て、その先で作家が求めてきたものまで活動の一端を辿りながらご覧頂く機会となります。是非ご高覧下さい。 [作家プロフィール] 全文提供:鎌倉画廊 会期:2014年7月12日(土)~2014年8月10日(日) 時間:水-日 11:00-18:00 休日:月、火、祝日 会場:鎌倉画廊 |
最終更新 2014年 7月 12日 |