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イグノア・ユア・パースペクティブ26 「モノの流用、イメージの引用、その次」
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2014年 7月 17日

 

児玉画廊|東京では7月12日(土)より 8月9日(土)まで、Kodama Gallery Collection - ignore your perspective 26「モノの流用、イメージの引用、その次」を下記の通り開催する運びとなりました。今展覧会では、大谷透、大槻英世、國政聡志、竹村文宏の4名をご紹介致します。既成品(レディ・メイド)を転用することや既にあるイメージを応用することは、ダダ、ネオ・ダダ、シミュレーショニズムなどを漸次的に経て、美術において重要な手法/思考として今日まで多くの枝葉を伸ばしてきました。今回の4名の作家は現代に続くこの系譜に連なりながらも、各々が独自の道を進んでいます。
大谷透(初紹介)は作品を制作する際に既成のイメージ(図)を引用しますが、それは例えば商品のロゴマークや規格マークスタンプといった図案や、ゲームのグラフィック、自分の落書きなど多岐にわたります。色彩を加えたり、輪郭を改変したりして、元の意味合いとは全くかけ離れたものに変容させ、絵画の中にぎこちなく紛れ込ませています。鑑賞者は、その違和感に勘付いて元が何であったかを具体的に想像できた瞬間、大谷の仕掛けの妙と自由な発想の飛躍に感嘆せざるを得ないでしょう。
大槻英世は、マスキングテープを擬態する絵画を制作しています。アクリル絵具で、まさに本物と見まごうばかりのマスキングテープを描き切っていますが、ただテープのリアルな質感を追求するという単なる技巧偏重ではなく、そこに具体的なモチーフが設定されている作品もあります。何本もの電線が整然と居並ぶ風景や、星や光を示す図形、カタカナや漢字などの文字といったようにです。これらの作品は素材と画題に関する、絵画的な意味合いを「擬態」という手段によって巧妙にスライドさせてしまうのです。
國政聡志(初紹介)は京都市立芸術大学大学院で染織を学び、結束バンドや洗濯バサミといったものを素材にした立体作品やインスタレーションを制作しています。一見、色鮮やかな器や繊細なレース編みのような外見を持つ作品は、染めの技術によって彩色された結束バンドなどを結い合わせることで構成されています。染め、編み、といった工芸や手芸の既知の技術を応用し、器や網のような道具の姿形を借用しているにも関わらず一つとしてその用途に適う物は無いという、その無駄さがかえって作品の丹精な美しさや染めによる澄んだ色彩を際立たせています。 
竹村文宏は、アクリル絵具を三次元的なペインティング/ドローイングの手段として使用することで注目を集めています。「描く」という行為そのものを二次元的な閉塞感から解放してみせるようなユニークな作品には目を奪われます。竹村の多くの作品は町並みやテーブルセットなどを俯瞰した視線から捉えて、細く絞り出した絵具によって完全に立体的な造形で構築するものです。今回の展示では、その他方で制作を続けている別のアプローチによる作品が出品されます。一つはオーセンティックな額装に入れられた静物画や風景画を額装ごと絵具で模倣してしまうオブジェクティブな作品シリーズ、もう一つに、写真で撮影した風景を元に、絞り出しの絵具で景色の輪郭を描き、その線と線の間を埋めるように絵具を塗り込んだ後、全面をサンドペーパーで研磨する、漆の研ぎ出しにも似たフラットなシリーズです。表面上はボトルシップ的な細密感やプラモデル風の様相という、趣味工作的な皮を被って竹村の絵画性が向かう先がどこにあるのかをますます期待させられます。
今展覧会は、4名の作家がいずれもイメージの典拠が明確な制作を行っていること、そして、技術的な革新ではない手法にも関わらず先駆的である、という二つの共通点を持っていることを基軸として構成されています。彼らの作品は一つの契機であるのでしょう。メディアやネットの発達によってプリントやコピーの問題以上に無秩序に共有されるイメージが横溢する現代社会においてなお、アプロプリエーション的なアプローチから派生する新たな枝葉とその先にある結実を示唆するものです。つきましては、本状をご覧の上展覧会をご高覧賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

敬具
2014年6月
児玉画廊 小林 健



出展作家:大谷 透、大槻英世、國政聡志、竹村文宏


全文提供:児玉画廊 | 東京
会期:2014年7月12日(土)~2014年8月9日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:児玉画廊 | 東京
最終更新 2014年 7月 12日
 

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