万代洋輔:あばら骨しか信頼してないじゃないですか俺 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2014年 6月 26日 |
TARO NASUでは初の個展開催となる万代洋輔。 不法投棄された廃棄物で立体を制作しそれを写真に収めた『蓋の穴』シリーズや自宅周辺をスキャナーによって撮影したシリーズなど、万代洋輔は写真という媒体の、その物質性と概念を独自のアプローチによって考察してきた。 グローバル化が加速に伴い、文化・民族・宗教そして国家などあらゆる境界線が揺らぎ、わたしたちは自らのアイデンティティの拠り所となるべき「神話」を喪失した。今日においては、自分は何者なのか?という問いに自ら答えることは一層困難になりつつある。 こうした中にあって、万代の『蓋の穴』シリーズにおいて制作される立体は、「神話」における一種の宗教彫刻あるいは祭壇として機能しているのではないだろうか。万代自身はこの制作手法を「供犠※1的な情念を顕在化させる」ためのアプローチだと話すが、廃棄物からなる立体はアイデンティティの発見という現代的救済を求めて自らの神に祈りを捧げるための祭壇ともなり得る存在といっても過言ではないだろう。この文脈においては、その制作行為もまた一種の宗教儀式として捉えることができる。既存のイメージとテキストから構成される近年の作品シリーズもまた、断片化された記億からひとつの文脈を生み出すという神話性を模索するものであるといえる。 万代は一貫して写真を主軸とする表現を続けてきた。その背景には、写真という媒体を介することでその被写体の存在により確からしさが付与されるという写真の特性があると考えられる。万代にとっては、写真に撮るということはその存在の確かさを証明する行為であり、ひいては「神話」という空想にリアリティを与える行為に他ならないからだ。 ※1 供犠(くぎ) 神霊に供物や犠牲をささげ,それを媒介として人間が神に祈る儀礼。 [作家プロフィール] *Reception for the artist:2014年7月5日(土) 18:00-20:00 全文提供:TARO NASU 会期:2014年7月5日(土)~2014年8月9日(土) |
最終更新 2014年 7月 05日 |