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久門剛史:Quantizeクォンタイズ
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 6月 02日

 

久門剛史(1981年京都生まれ)は2007年に京都市立芸術大学大学院彫刻専攻修了。 大学在学中の2002年にはアーティストグループSHINCHICAを結成、主に音響やインスタレーションを担当しています。そうした経歴から、久門にとって「音」と「彫刻」という二つの要素が作品制作の主軸になっています。

本展の題名であるQuantize(クォンタイズ)とは、電子音楽の制作における補正機能の名称です。一見して物体が無造作に配置されているように見える空間ですが、実際はコンピュータ・プログラムによって補正を施された、いわば「計画された偶然」が生み出されています。雨風、人の声、電車の音、得体の知れない雑音。久門のインスタレーションにおいて、それらの音はときに静かに、ときに大音量で響きながら、周囲の仕掛けと共鳴し豊かなポリフォニーを形成します。

久門はそうしたリズミックな空間で起こる現象や音を「消えてなくなる彫刻」として石彫や木彫などと等価に考えます。扇風機で起こる風、それに揺らぐテーブルクロス、通り過ぎる自動車や電車の音。それぞれの現象は緻密にプログラムされていますが、その順列やタイミングはコンピュータの乱数によって導き出されます。したがって、5分という枠内で同じ構成は二度と起こることはなく、微細な変化が常に存在しています。久門は「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という鴨長明『方丈記』の一節からも影響を受けていると言います。

本展は二つの空間から構成され、もう一つの小さな空間では昨冬、国際芸術センター青森で発表されたミラーボールの作品が展示されています。球体の表面を覆うのは鏡でできた無数の時計であり、それらが乱反射して久門の言うまるで「ドラえもんの机の引き出しからタイムマシーンに乗ったかのような」光と影を作り出します。このミラーボールはもう一つのインスタレーションの空間を象徴するように、個別の時間軸が集合体となって世界を形成しているという考えに基づいています。

2012年から個人としての活動を再開。2013年には資生堂ギャラリーにて個展を開催。2014年には国際芸術センター青森のグループ展にて《ハレかケ。―青森―》を発表。これまでは日常と非日常という対立項に焦点が当てられてきましたが、今回のオオタファインアーツでの個展で久門がチャレンジするのは、よりポリフォニックな現象としての新たな彫刻術です。

*初日5月24日午後6時より作家を囲んでオープニングパーティーを行います。


全文提供:オオタファインアーツ
会期:2014年5月24日(土)~2014年6月28日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:オオタファインアーツ
最終更新 2014年 5月 24日
 

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