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前原冬樹:失われゆく時が甦る
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 5月 16日

「一刻(皿に秋刀魚)」
2014年
桜、油彩
3.3×32×22cm

一本の木から生まれる唯物の美

前原冬樹は、写実技巧の極みと言うべき複雑な作品を、たった一本の木から、全く接がれることなく彫り出している木彫作家です。その作品は、東京藝術大学やおぶせミュージアム・中島千波館に収蔵されています。

古びたカミソリ、錆びていく塗装、皿の上に置かれた梅干しや秋刀魚…朽ち果てていく瞬間や、日常で気に留められず失われていく情景にかぎりない美しさを感じて、それを一木に留めるのです。彫り出された作品は、さらに油彩で丹念に着彩されることにより、木とは思えない質感が加わり、時間を経た情緒を醸し出します。写実的な表現を追求し続ける姿勢は、作品が後世に伝えていく悠久の存在感を生み出す“一刻”の骨頂なのです。

今展では、新作を中心に、前原の彫刻によって甦る奥ゆかしく懐古的な美と対峙した木彫作品に、幻想を精巧にアウトプットした新しい世界観を呈するシリーズや、今展のために描きおろしたオリジナルのデッサンを展覧販売いたします。非常に手間のかかる作業のため、年間で数点しか完成できず、繊細な構造のため実物を展示する機会の少ない貴重な作品を、この機会にぜひご覧ください。

[作家プロフィール]
1962東京都生まれ
1998 東京藝術大学 美術学部 絵画科 油画専攻卒業

プロボクサーから転身して、東京藝術大学へ入学。その後、油画科から彫刻へと転じるという異色の経歴を持つ。
近年の主なグループ展は、2012年「シャッフルⅡ」(「アートフェア東京2012」/東京国際フォーラム)。
個展は、2008年「木彫 前原冬樹展」(おぶせミュージアム・中島千波館/長野)
2010年「いろはにほへどちりぬるを」(YOKOI FINE ART/東京)、2012年「一刻 1998-2012」(YOKOI FINE ART/東京)などの開催がある。


全文提供:Bunkamuraギャラリー
会期:2014年5月28日(水)~2014年6月4日(水)
時間:10:00~19:30
会場:Bunkamuraギャラリー
最終更新 2014年 5月 28日
 

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