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三瀬夏之介:Vernacular Painting
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 5月 09日

 

イムラアートギャラリー東京では、2014年5月24日(土)から6月15日(日)まで、三瀬夏之介個展「Vernacular Painting」を開催いたします。本展は、三瀬にとってイムラアートギャラリーで4回目の個展となります。展覧会初日には、モデレーターに小崎哲哉氏を迎え、赤坂憲雄氏(民俗学者)と三瀬夏之介のトークイベントも開催いたします。

三瀬夏之介は、和紙や墨などの従来の日本画材を用いながら、アクリル絵具やコラージュなど様々な素材や技法を柔軟に取り込み、自身に身近なモチーフと歴史を感じさせるモチーフを混在させ、「日本画」における「日本」のあり様を問うてきました。1995年に地元奈良で阪神大震災にあい、精神的に絵を描くことができなくなった時期を経て、2009年に山形に拠点を移し後進の指導にあたっていたとき、東日本大震災が起こりました。三瀬はこれらの経験から、この不安定な世の中を生きるために、自分の身体感覚や主観性を手放すことなく、しかしそれらを判断基準とする私的な感覚による絵画を超えるものを強く希求するようになりました。そして近年、そのような現代美術は民俗学的アプローチによって可能になるのではないかと考え、以下のように発言しています。
「自己言及的な絵画ではないものを、個人から出発しつつも、その抽象度を上げたところで、「私」の絵というより、「私たち」の絵をつくりたい。僕が作ったものがみんなに共有されて、様々な語りを生む依り代になるようなイメージ。」
「土地の奥底に降りていって、資料を読んだり、聞き書きした歴史を調べていくことで、民俗学的なアプローチによる現代美術の可能性が開けてくるのではないか。それは、町おこしとか、地域型のアートプロジェクトのようなものではなくて、「美術」の成立以前の状態に立ち返るようなもの。」

今回、三瀬は民俗学的アプローチのよる現代美術の一つのあり方として、「Vernacular Painting」という言葉を考えました。

[作家コメント]
「ヴァナキュラー(vernacular)」とは「ある土地に固有の」、「風土的」などと訳される言葉である。近代におけるヴァナキュラーの概念は主に建築分野からはじまった。バーナード・ルドフスキー『驚異の工匠たち-知られざる建築の博物誌』によれば、その特性は三つ。建築家なし、職人なしによる無名性、非作家性と関連する『非職業性』。土地の気候に適した環境制御と、素材の現地調達による『風土性』。魔術的で非均質な身体を包むコスモロジーとしての『空間性』。である。ここ最近の私の制作、発表の場面において、この概念がずっと頭から離れないのだが、思えばこれらは近代以降に誕生したアーティスト像を否定するものばかりだ。中心と辺境との関係が機能しなくなって久しい今、この言葉をキーワードに震災以降の絵画の可能性を考えてみたい。

三瀬夏之介

[作家プロフィール]
三瀬夏之介

1973 奈良生まれ
1999 京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了
2014- 東北芸術工科大学芸術学部美術科教授

主な個展
2007「 ARKO2007三瀬夏之介展」大原美術館(岡山)
2008「 J」イムラアートギャラリー(京都)
2009「 冬の夏」佐藤美術館(東京)
「問月台」中京大学アートギャラリーC・スクエア(愛知)
2010「 肘折幻想」イムラアートギャラリー(京都)「 ぼくの神さま」イムラアートギャラリー(東京)
「だから僕はこの一瞬を永遠のものにしてみせる」第一生命ギャラリー(東京)
2013「 ぼくの神さま」青森公立大学国際芸術センター青森ACAC(青森)
「日本の絵」平塚市美術館(神奈川)
「 N.E.blood21 Vol.48 三瀬夏之介展」リアス・アーク美術館(宮城)
2014「 三瀬夏之介 ― 雨土の記」浜松市秋野不矩美術館(静岡)
「三瀬夏之介 風土の記―かぜつちのき―」奈良万県立万葉文化館(奈良)

主なグループ展
2006「 MOTアニュアル2006 No Border「 日本画」から/「日本画」へ」東京都現代美術館(東京)
2007「 日本画滅亡論」中京大学アートギャラリーC・スクエア(愛知)
2008「 所蔵作品展 近代日本の美術」東京国立近代美術館(東京)
「 形・意・質・韻」台北市立美術館(台湾/台北)
2009「 VOCA2009 -新しい平面の作家たち」上野の森美術館/東京
「 Kam:i 静と動ー現代日本の美術」ザクセン州立美術館(ドイツ)
2010「 第一生命ギャラリー所蔵作品展I-VOCA展2007~2009受賞作品-」第一生命ギャラリー(東京)
「roots/東北画は可能か?」アートスペース羅針盤(東京)
2011「 桃源万歳!-東アジア理想郷の系譜-」岡崎市美術博物館(愛知)
「東京国立近代美術館所蔵作品展-近代日本の美術-」東京国立近代美術館(東京)
「 会津・漆の芸術祭2011 ~東北へのエール~」会津若松市、喜多方市(福島)
2012「 ジパング展―沸騰する日本の現代アート―」新潟県立万代島美術館(新潟) ほか巡回
2014「 岡倉天心没後100年記念展 天心の思い描いたもの―ぼかしの彼方へ」茨城県近代美術館(茨城)

パブリックコレクション
関西文化芸術学院、佐藤美術館、大原美術館、第一生命保険株式会社、東京都現代美術館(寄託)、豊橋市美術博物館、文化庁、横浜美術館(寄託)、ザクセン州立美術館 (ドレスデン・ドイツ)、ベネトン財団

レセプション | 5月24日(土)18:00〜 @イムラアートギャラリー東京

トークイベント
赤坂憲雄×三瀬夏之介×小崎哲哉(モデレーター)
日時 | 2014年5月24日(土)17:00 ~ 18:00
会場 | 3331 Arts Chiyoda 1Fコミュニティスペース


全文提供:イムラアートギャラリー東京
会期:2014年5月24日(土)~2014年6月15日(日)
時間:12:00ー19:00
休日:月・火・祝
会場:イムラアートギャラリー東京
最終更新 2014年 5月 24日
 

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