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小川浩子:水景
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 8月 14日

copyright(c) Hiroko OGAWA

今展示は幅120cm、長さ8メートル以上の生地の上を手縫いで糸を繰り返し縫い付けた作品を中心にしたインスタレーションを展開します。無数に広がりのびていく糸の流れは単に水の流れを表しているだけではなく、私達自身が紛れもなくこのながれの中に存在している事を教えてくれます。「呼び水」の体験を元に水を根底においた展示は3度目となりますが、水の流れについて自分なりに1つの区切りをつけた展示となっています。

数年前に暮らしていた家にはポンプ式の井戸があり、そこから水を汲みあげ植物に水を与えていました。
ある時に水が出なくなり "この井戸は水が枯れてしまった" と私は思いましたが、同じ敷地内に暮らしている大家さんにその事を伝えるとポンプの隙間から少しの水を差し入れてくれ、そうしてまたポンプを上下するとみるみるうちにまた水が湧き上がっていきました。
枯れたと思っていた井戸からすぐに水が出たという事よりも、その仕組みを考えた時に自分自身が肉体から離れ液体となってとても速い速度で地中の内部へ沁み入り、また宙に浮き上がっている様な錯覚を体験し強い衝撃を受けました。

この体験から水の循環について考えるうちに、生き物や光の構造、時間や歴史、社会などの様に地球上の様々な流れは一見無秩序の様でいて実はフラクタルの様に単調で秩序よく流れている事、諸現象は重要な意味を持ち共通している事に気付きました。

自然界に於いての水の流れを一瞬にして体験した過程を可視化し、それによって単に目で捉えられている物質世界が全てではないという事を制作の過程で客観的に理解し、またそれを表現できればと思っています。その中に真の美しさ、真理があると思っているからです。

全文提供: 小川浩子

最終更新 2009年 8月 31日
 

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