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菊池敏正:Rational and Irrational
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 3月 27日

"Geometrical Form - 011" 2013, 25 x 29 x 65cm, 檜•漆•顔料

この度メグミオギタギャラリーでは、2012年5月以来2回目となる菊池敏正新作個展「Rational and Irrational」を開催します。 菊池敏正は2008年に東京芸術大学大学院保存修復彫刻専攻博士課程を修了、現在は東京大学総合研究博物館に所属し、研究・制作を行っています。 菊池作品は2013年3月にオープンした東京大学学術文化総合ミュージアム「インターメディアテク」に常設展示されています。

菊池敏正は、木彫、乾漆に代表される日本古来の伝統技法を用い、人骨や数式といった学術模型をアート作品へと昇華します。 彼が制作に用いる日本古来からの伝統技法は、古来より時の洗礼に耐え、現在まで存在し続けている、いわば現存する表現技法の中で最も普遍性を有する技法であるといえます。菊池が作品のモチーフに用いる「サイエンス(自然科学)」の世界もまた、国境、言語、文化、宗教等にとらわれる事の無い、世界で最も共通意識を持つ事が出来る世界と考えられています。 一方で、「美術」はその歴史を紐解けば、20世紀にはドイツにおける表現主義を皮切りに抽象美術、バウハウス運動、未来派、構成主義と、短期間に様々な主義手法による新たな概念が打ち立てられ、時代の流れの中で自由な変遷を遂げてきました。 菊池は、学術分野としての「現代美術」の使命は、古典や前衛といった定義に侵されることのない新たな領域を解放していくことであると考えます。 彼の「サイエンス」と「伝統技法」という、どちらも人間の手によって生み出されながらも普遍的な要素を有する二つの世界を重ねる行為は、作品が時間の圧力を受けない唯一無二のものとして美術の歴史上にと存在し続けられるか、その久遠の可能性に果敢に挑んでいることと同義であるといえるでしょう。

今展タイトル「Rational and Irrational」は、ロシア構成主義の命名者のひとりであるとされるナウムガボのマニュフェストから由来します。 数学の世界で有理数、無理数を意味するこの言葉は、合理性、不合理性と言い換えることが出来ます。 数理模型等の純粋幾何学による造形を、不合理性の伴う人間の手によりつくり出すこと。自然界に存在しない不合理な形態を、時間という圧力に耐えた伝統的(合理的)技法で制作すること。 表裏一体である合理性と非合理性の関係を相互に行き来することで生まれる知覚は、新たなアートの方向性を示唆することでしょう。

今展では、19世紀から20世紀にかけてドイツで制作された数理模型をモチーフとした作品、19点を展示します。 乾漆により制作された大型彫刻の他、木彫でつくられた幾何学的形態作品を、吊り作品やモビール状とし動きを持たせるなど、前回の個展に続く新たな展開を提示します。 前衛と古典のはざまを解放し、美術史に新たな一ページを永遠に刻む込まんとする菊池敏正の挑戦に、どうぞご期待ください。

★レセプション:4月8日(火) 17:30 - 19:30


全文提供:メグミオギタギャラリー
会期:2014年4月8日(火)~2014年4月25日(土)
時間:11:00 - 19:00
休日:日・月曜、祝日
会場:メグミオギタギャラリー
最終更新 2014年 4月 08日
 

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