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星星會展―日本画の伝統と未来へ
展覧会
執筆: カロンズネット編集3   
公開日: 2014年 3月 10日

下田義寬《聴春》

現代日本画の最高峰、広島に集結!!

本展覧会では、現代の日本画界を牽引する四人の作家たち、下田義寬、竹内浩一、田渕俊夫、牧進が、「星星會展」を舞台に発表を重ねた意欲作約70点が一堂に会します。 第1回展の星星會展は、2005(平成17)年に開催されました。その後2013年の第5回展まで、隔年で展覧会を開催。惰性に流されぬよう第5回展の開催をもってその活動に終止符を打つことがあらかじめ決められていました。明確な目的意識を当初から持ち合わせていたことがわかります。相互に刺激し合い、毎回新たな創意を加えながら、屏風などの大作を含む新作を出品していったのです。
会派にこだわることなく日本画の新たな可能性を探る野心的な運動体としては、古くは福田平八郎、山口蓬春、中村岳陵らによって1930 (昭和5)年に発足した「六潮会」があります。戦後においても、1959(昭和34)年に加山又造、横山操、石本正によって始まりその後平山郁夫も参加した「轟会」、のちに星星會の一員となる竹内浩一を含めた若手・中堅作家たちによって1984(昭和59)年に結成された「横の会」など、いくつもの例を挙げることができます。これらのグループ結成の背景には、所属団体内ではできない実験的な創作を行うことで作画上の行き詰まりを打破したい、という渇望がありました。
星星會については、日本画壇の中ですでに大家の域に達していた4名の画家が、決して自らの状況に安住せず、これまで積み重ねてきた画境をさらに深化させるため、いわば挑戦者のスタンスで創作に臨みました。「横の会」は、メンバー間でしばしば激しく意見をぶつけ合う緊張感に満ちた場だったようですが、星星會は、展覧会ごとに意見交換を行いながらも各作家の世界を尊重し、同志の仕事を身近に感じつつ自らの世界を冷静に掘り下げることのできる貴重な場でした。
本展覧会では、会の命名者である髙山辰雄の代表作もあわせて紹介します。現代日本画の最高峰を心ゆくまでご鑑賞ください。

当館主任学芸員 永井明生

【展覧会構成と内容】
下田義寬、竹内浩一、田渕俊夫、牧進の作品を、原則として星星會展の出品順に展示します。なお、会場に入って最初のスペースでは、各作家の大作を1点ずつと、髙山辰雄の晩年の代表作1点を紹介します。
★下田義寬
下田義寬のモチーフは一貫して自然です。第1回展では舞い飛ぶ鳥を三様にとらえた作品を発表。その背景処理には各々工夫が見られ、鮮やかな群青で水面を彷彿とさせたり、流れるような斜めの線を加えることで鳥の動きを暗示させたり、夕焼けに染まるがごとき空間が料紙装飾のようであったりと、実に多彩です。2回展以降は主に山岳風景を描き、森林や渓流などを組み合わせるなど工夫を重ねました。しばしば月や太陽が添えられることで、刻一刻と移り変わる光の表現がたくみに取り入れられています。

★竹内浩一
竹内浩一は、抑制された色彩によって、動物の姿態を独自の視点でとらえています。膨張して身をくねらせる牛、顔貌が溶解しつつあるような馬など、敢えて形をくずすことで、自らの心象を動物の姿に仮託しているかのようです。一方で、写実表現を極限まで突き詰めた作品も同時に示されます。明らかな擬人化、不定形の文様が浮遊するような背景処理なども、しばしば見受けられます。繊細な筆致で植物を描いたもの、あるいは植物と動物との組み合わせも、過去の作例をさらに発展させるような形で出品されました。

★田渕俊夫
田渕俊夫は、第1回展で墨のみを用いた3作品を出品。以降第5回展まで、毎回アプローチを変えながら水墨画を1点加えることを欠かしませんでした。同時に、岩絵具による華麗な色彩表現も試み、深閑とした大自然の景観、強い生命力を宿した草花、田園風景、都市風景など、その対象は実に幅広いものがあります。微視的なものと巨視的なものが入り混じり、自在に展開されているのです。水墨においては、作画に適した土佐麻紙を見出し、余白を生かした淡墨による表現を繰り返し模索しました。それはまた、色彩を用いての創作の参考ともなったようです。

★牧進
牧進は、いずれの作品にも季節の情感をにじませながら、花や鳥、魚などをモチーフとした作品を毎回出品しています。全体として、多色を用いて画面を装飾的に構築していく傾向が強く見られます。明快な線による形態把握と、強い色彩の対比。桜の花弁や河原の石などは、時に過剰なまでに画面を埋め尽くします。他方、対象を絞り込み余白を活かした表現においても独特の冴えを見せています。金・銀・プラチナや焼群青などを効果的に用いるための試行錯誤が、多くの作品に見出せます。鳥や花の姿を借りて人間の有り様を表すような作品も見出せます。

☆星星會展とは

星星會展は、2005(平成17)年に第1回を開催し、以降隔年で展覧会を開催。2013(平成25年)年の第5回展をもってその活動を終了したグループ展です。メンバーは下田義寬、竹内浩一、田渕俊夫、牧進の四氏で、自由な立場で創作活動に邁進し、新作の大作を中心に発表してきました。同世代の作家がその所属団体を越えて活動し、緊張感を持って新たな日本画の世界に挑戦する非常に意欲的な試みでした。
「星星會」と命名をしたのは、現代日本画の巨匠・髙山辰雄で、「小さな星でも切磋琢磨によって大きな星として輝くようになる」ことを願ってこの名を付けた、とのことです。


全文提供:広島県立美術館
会期:2014年4月17日(木)~2014年5月25日(日)
時間:9:00-17:00 (金曜日は20:00まで) ※4月17日(木)は10:00から ※入館は閉館30分前まで。
会場:広島県立美術館
最終更新 2014年 4月 17日
 

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