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三瀬夏之介
アーティスト
執筆: 小金沢 智   
公開日: 2008年 12月 28日

Natsunosuke MISE. Photo by Ryo OBARU

(みせ・なつのすけ)1973年8月1日、奈良県生まれ。1997年3月、京都市立芸術大学美術学部美術科日本画専攻卒業。1999年3月、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻修了。2006年1月、東京都現代美術館でのグループ展「MOTアニュアル2006 No Border 「日本画」から/「日本画」へ」に参加したことをきっかけに、活動の中心であった関西圏だけではなく関東圏でもその名前と作品が広く知られる。同年4月、五島記念文化財団美術新人賞受賞。2007年3月27日、同賞の副賞としてフィレンツェへ渡り、約一年間滞在。同年9月、一時帰国し、9月15日から10月21日まで大原美術館のアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「ARKO 2007」に参加。電気系統の一切ない、洋画家・児島虎次郎の旧アトリエ、無為村荘にて滞在制作を行う。その後フィレンツェへ戻り、2008年3月7日、帰国。同年11月30日、深圳画院での第6回インクペインティングビエンナーレ参加に際して中国に渡り、同年12月13日まで現地で滞在制作。2009年1月、美術館では初となる個展「冬の夏」を佐藤美術館で開催。展覧会のタイトルは、フィレンツェで出会ったシエナ生まれの詩人、ロレンツォが三瀬に贈った言葉に由来する。現在は関西文化芸術学院高等課程に美術専攻教師として勤めつつ、国内外の様々な場で発表をしている。

個人的な言い方になるが、三瀬の作品について語ることは難しい。しかしそれは三瀬が「日本画」を出自とし、その「日本画」が明治期に「洋画」の対語として生まれたという制度的屈折を内に抱えているからではない。近年の「日本画」にまつわる言説の中に三瀬は少なからず登場し、三瀬自身それについて言葉を惜しむことはせずむしろ積極的に発言、論議の場を提供してきてもいるが(※註)、三瀬の作品を「日本画」という制度を中心に語ることができるとは思えないのである。なるほど、三瀬の出自や作品や語る言葉は自説を語りたくて仕方がない美術史家や評論家にとっては格好の対象だったかもしれない。作家にとってもそうした批評を受け、生まれた国が歩んできた歴史について思考を重ねることは、制作をする上でのモチベーションになったことだろう。数多くの富士山を一枚の画面に林立させた作品に《日本の絵》(文化庁、2005年)と名付ける三瀬の身振りから、批評的要素を無視することが難しいこともまた事実である。けれども制度に対する批評が目的であれば、それが必ずしも絵という体裁をとる必要はないことも三瀬は知っている。

わたしがなにより惹かれるのは、たとえば錆びついた金属を思わせる緑青のマチエールであり、大小さまざまなサイズの和紙を継ぎ接ぎするという手法から生まれるダイナミックな画面であり、大仏・ネッシー・UFO・大魔神といったモチーフを何でもない風景(それは三瀬の生まれ育った奈良の風景でもあれば留学先のフィレンツェのそれでもある)に混在させるその想像力である。つまり先に「三瀬の作品について語ることは難しい」と書いたのはその作画に籠められている情報量ゆえにであり、それ以外ではありえない。そしてその作品は2007年の渡伊を経て、金箔や岩絵具による比較的派手な色彩が特徴的だった画面から墨によるモノトーンを中心としたそれへと大きく移行しつつある。三瀬はかつて個展のタイトルを「わたしは絵が描きたい」とし、ARKOでのレジデンスをまとめたカタログには「もう僕は死ぬまで描くことをやめないだろう」と書いた。それらの言葉が今この時代に絵を描くことの困難さから発せられていることは明らかだが、わたしはそこから生まれる絵をこれからも見ていきたい。見ることへの欲求を掻き立てる力が、三瀬の作品には厳然と備わっているのである。

(※註) 筆者が実見したものに限るが、たとえば以下のようなものがある。

  • 個展「奇景」(アートインタラクティブ東京、2006年)会期中の11月11日に三瀬自身が企画したクロストーク、「いま、なぜ描くのか?」(パネリスト:三瀬夏之介、天野一夫、中村ケンゴ、阪本トクロウ、山本太郎、船井美佐)。
  • 京都国立近代美術館が企画展「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」(2006年)に際して行った電子メール討論会、「揺らぐ近代 揺らいでいるのはなにか?」への投稿。
  • 森本悟郎キュレーションのグループ展「日本画滅亡論」(中京大学Cスクエア、2007年)に際して企画されたシンポジウムへの参加(パネリスト:千葉茂夫、前田恭二、三瀬夏之介、柳澤紀子)。
  • 『美術手帖』(美術出版社)2008年1月号特集「日本画復活論」に際して寄稿した「日本画復活論」。及び、同時掲載された美術評論家・福住廉との往復書簡。

パブリック・コレクション: 大原美術館、東京国立近代美術館(寄託)、豊橋市美術博物館、文化庁
ホームページ: http://www.natsunosuke.com/

活動年表
1996年
     -    「春季創画展」出展(京都市美術館)
1997年
     -    「京都市立芸術大学 卒業制作展」山口賞  受賞
     -    「創画展」出展(巡回:東京都美術館、京都市美術館)
1998年
     -    「今立 Art Camp’98」滞在制作参加 (巡回:今立芸術館、福井市美術館、みやこめっせ 岡崎/京都)
     -    「春季創画展」出展(京都市美術館)
     -    グループ展「アナーキースペース」(西陣北座・京都)
     -    「第16回上野の森美術館大賞展」出品(巡回:上野の森美術館、京都文化博物館)
     -    「ひとつぼ展」公開審査会 出席(Guardian garden・東京)
1999年
     -    「京都市立芸術大学 修了制作展」出展(京都市美術館)
     -    「創画展」出展(巡回:東京都美術館、京都市美術館)
     -    グループ展「6direction」(Artislong Gallery・堀川三条/京都)
     -    グループ展「Psychological」関連ワークショップ「小人を呼ぶための儀式」(Pepper's Gallery・銀座/東京)
     -    グループ展「アナーキースペース」(西陣北座・京都)
     -    個展「シナプスの小人」(Blue Nile・心斎橋/大阪)
     -    個展「シナプスの小人〜循環〜」(Artislong Gallery・三条堀川/京都)
2000年
     -    「第18回上野の森美術館大賞展」出品(巡回:上野の森美術館、京都文化博物館)
     -    「春季創画展」出展(京都市美術館) 
     -    グループ展「アナーキースペース」(西陣北座・京都)
     -    「第29回現代日本美術展」出展(巡回:東京都美術館、京都市美術館)
     -    「第14回現代日本絵画展」出展(宇部市文化会館・山口)
     -    「野外彫刻展 in 多々良木」模型入選(あさご芸術の森美術館/兵庫)
     -    個展「三瀬夏之介展」(Evangil・岡崎/京都)
     -    個展「シナプスの小人 〜森〜 」関連ワークショップ「小人を呼ぶための儀式」
(大阪造形センター内 OZC Gallery・大阪)
     -    個展「シナプスの小人〜循環〜」(Artislong Gallery・三条堀川/京都)
     -    「第5回旺山国際文化芸術祭」招待参加 (江陵市/韓国)
     -    レジデンス(旺山造形研究所)
2001年
     -    個展「シナプスの小人」(小野画廊・京橋/東京)
     -    個展「シナプスの小人 〜ladder〜 」(浮遊代理店・奈良)
     -    「第19回現代日本彫刻展」模型入選(宇部市野外彫刻美術館・山口)
     -    「ひとつぼ展」公開審査会出席(Guardian garden・東京)
     -    グループ展「Experimental art Random」関連ワークショップ「小人を呼ぶための儀式」
(Gallery coco(京都)、Art complex1928(京都))
2002年
     -    「第2回 トリエンナーレ豊橋 星野真吾賞展」大賞受賞(豊橋市美術博物館)
     -    グループ展「すきまをみつめる 三瀬夏之介×大西正人vol.1」(巡回:浮遊代理店・奈良)、ギャラリー天人・大阪)
     -    個展「ルネッサンス奈良町 若手作家展 第1回
三瀬夏之介『くらやみのひかり/森』」関連ワークショップ「錆で描こう」(奈良町物語館)
     -    グループ展「くらやみのひかり 三瀬夏之介×大西正人vol.2」
(巡回:関西文化芸術学院内 ギャラリーK・奈良)、浮遊代理店/奈良、大阪造形センター)
     -    個展「シナプスの小人 〜錆の森〜 」(アートスペース上三条・奈良)
     -    グループ展「すきまをみつめる 三瀬夏之介×大西正人vol.3」(ギャラリー天人・中崎町/大阪)
     -    グループ展「多様化する価値」(比良美術館・滋賀)
     -    グループ展「Living with ART」(ホワイトキューブ・中京/京都)
     -    収蔵    豊橋市美術博物館
2003年
     -    個展「私は絵が描きたい」(gallery neutron・京都)
     -    個展「縄紋紀行」(浮遊代理店・奈良)
     -    グループ展「something⇔nothing」(巡回:ギャラリーそわか・京都)、浮遊代理店・奈良))
     -    グループ展「日本画は死んだか?」(浮遊代理店・奈良)
     -    企画「すきまをみつめる ー巡礼ー 」すきまプロジェクト三瀬夏之介×大西正人
(奈良市内各所にてアートイベント実施、アートマップ制作)
     -    グループ展「奇景   三瀬夏之介・青島英男・神田晃弘」(アートスペース上三条・奈良)
     -    グループ展「みつば展」(よつばカフェ・奈良)
     -    グループ展「尖」(京都市美術館別館・京都)
2004年
     -    個展「私は奈良で考える」(gallery neutron・京都)
     -    個展「Works 奈良⇔東京」(画廊宮坂・銀座/東京)
     -    グループ展「日本画の100」(石田大成社ホール・京都)
     -    グループ展「関西文化芸術学院 教員展」関連シンポジウム「作品制作と美術教育」(アートスペース上三条・奈良)
     -    グループ展「なら輪展」(奈良県文化会館・登大路/奈良)
     -    グループ展「今立現代美術展'04 ART COMPER'S NOW」(いまだて芸術館・福井)
     -    グループ展「promnade @ nara 西田隆彦・三瀬夏之介」(浮遊代理店・奈良)
     -    グループ展「尖」(京都市美術館別館・京都)
     -    「第2回 東山魁夷記念 日経日本画大賞展」出品(ニューオータニ美術館・(麹町/東京)
2005年
     -    グループ展「ニュートロンに初詣 〜Japanize Japan〜 」(gallery neutron・京都)
     -    個展「日本の絵」(gallery neutron・京都)
     -    グループ展「昭和モダン1967年」(アートスペース上三条・奈良)
     -    グループ展「羅針盤セレクション2005 HOPE」(アートスペース羅針盤・京橋/東京)
     -    グループ展『「絵図」と「絵画」との間で』関連シンポジウム:「日本画」そして「絵画」
天野一夫、岡村桂三郎、間島秀徳、三瀬夏之介(京都造形芸術大学Galerie Aube)
     -    グループ展「日本画ジャック」(京都文化博物館・三条高倉/京都)
     -    「第3回トリエンナーレ豊橋 星野真吾賞展」賛助出品(豊橋市美術博物館)
     -    個展「日本の絵」(アートスペース羅針盤・京橋/東京)
     -    個展「日本の絵」(アートスペース上三条・奈良)
     -    グループ展「Eco bags save the earth」(Guardian garden・銀座/東京)
2006年
     -   「MOTアニュアル2006 No Border「日本画」から/「日本画」へ」出展
関連トーク:町田久美×三瀬夏之介(東京都現代美術館・東京)
     -    個展「スター・ナヴィゲーション」(ギャラリーRay・名古屋/愛知)
     -    グループ展「美術館ワンダーランド 夏の思いで 今を生きる」
関連ワークショップ「安曇野⇔奈良 バスにみんなで絵を描く」  (豊科近代美術館・長野)
     -    グループ展「飛鳥展」(画廊飛鳥・明日香村/奈良)
     -    個展「web UFO」(Bunkamura arts & Crafts・渋谷/東京)
     -    出展「第9回 NEXT展 日本画・京都からの表現」招待作家(巡回:京都高島屋、砺波市美術館(富山))
     -    グループ展「卒啄展」(画廊宮坂・銀座/東京)
     -    個展「奇景」<br />関連トーク:石橋圭吾×三瀬夏之介v
     -    個展「奇景」(STREET GALLERY・神戸/兵庫)
     -    個展「地図絵」(画廊宮坂・銀座/東京)
     -    出展「第8回 雪梁舎フィレンツェ賞展」(雪梁舎美術館/新潟)
     -    個展「奇景」関連企画クロストーク:三瀬夏之介、天野一夫、中村ケンゴ、
阪本トクロウ、山本太郎、船井美佐(アート・インタラクティヴ東京・新橋/東京)
     -    2006 五島記念文化賞 美術新人賞 受賞
     -    出展「第3回 東山魁夷記念日経日本画大賞展」(ニューオータニ美術館・麹町/東京)
2007年
     -    個展「rust work 1998-2007」(ギャラリーRay・名古屋/愛知)
     -    出展「京都アートギャラリーフェア2007」(みやこめっせ・岡崎/京都)
     -    出展「平成17−18年度 文化庁買上優秀美術作品 披露展」(日本芸術院会館・上野/東京)
     -    海外研修    五島記念文化財団研修員(フィレンツェ/イタリア)
     -    グループ展「青峰会」(蔵丘洞画廊・京都)
     -    レジデンス    ARKO2007    児島虎次郎旧アトリエ無為村荘(倉敷市酒津/岡山)
     -    個展「ARKO2007 三瀬夏之介」作品展示(大原美術館・倉敷/岡山)
     -    「倉敷屏風祭」    大原家より出品
     -    グループ展「日本画滅亡論」関連シンポジウム:
千葉成夫、前田恭二、三瀬夏之介、柳澤紀子(中京大学 Cスクエア・名古屋
     -    個展「日本画復活論」(名芳洞blanc・名古屋/愛知)
     -    個展「君主論」(gallery neutron・京都)
     -    グループ展「Artistic Christmas」(新宿高島屋 美術画廊・東京)
     -    グループ展「20人の天使」展(PAXREX(神戸・兵庫)
     -    収蔵    文化庁、大原美術館
     -    寄託    東京国立近代美術館
2008年
     -    グループ展「所蔵作品展 近代日本の美術」(東京国立近代美術館・東京)
     -    個展「ぼくの神さま in Firenze」    地下界アトリエ(フィレンツェ/イタリア)
     -    個展「ぼくの神さま」関連トーク:石橋圭吾×三瀬夏之介(Kyoto Art Map 2008参加企画)(gallery neutron・京都)
     -    グループ展「富士山 近代に展開した日本の象徴」(山梨県立美術館)
     -    「第4回トリエンナーレ豊橋 星野真吾賞展」賛助出品(豊橋市美術博物館)
     -    グループ展「大原美術館展〜珠玉の東西名画コレクション」    金沢21世紀美術館(石川)
     -    「Form, Idea, Essence and Rhythm: Contemporary East Asian Ink Painting」出品(台北市立美術館・台湾)
     -    第6回 Ink-Painting Biennale 出品(深圳画院/中国)
     -    個展「三瀬夏之介展「J」」(imura art gallery・京都)
2009年
1月    個展「三瀬夏之介展 冬の夏」(佐藤美術館・新宿/東京)
1月    「現代の水墨画2009 水墨表現の現在地点」出品(富山県水墨美術館・富山)
3月    「VOCA展2009」出品(上野の森美術館・東京)
4月    「現代の水墨画2009 水墨表現の現在地点」出品(練馬区立美術館・東京)
5月    個展「シナプスの小人 三瀬夏之介展」(新宿髙島屋美術画廊・東京都)
7月    グループ展「山本直彰 岡村桂三郎 三瀬夏之介」(コバヤシ画廊・東京)
7月    「ひじおりの灯」出品(肘折温泉街・山形)
7月    「NIHONGA・京」出品(日本橋三越本店特選画廊・東京)
9月    個展「三瀬夏之介展 問月台」(中京大学Cスクエア・名古屋/愛知)
9月    グループ展「ROOTS展」(東北芸術工科大学 北・南エントランスギャラリー・山形)
10月    「新収蔵作品展 2006-2009」出品(大原美術館・岡山)
10月    個展「三瀬夏之介 肘折幻想」(山形県肘折温泉街旧郵便局舎・山形)
10月    「Kami.Silence-Action Japanese Contemporary Art on Paper」出品(ドレスデン州立美術館版画素描館)
11月    個展「笑月」    京都髙島屋美術画廊(京都)
12月    「Artistic Christmas vol.3」出品(新宿髙島屋美術画廊・東京)
2010年
    1月    「山本冬彦コレクション展」出品(佐藤美術館・東京)
4月 グループ展「roots/東北画は可能か?」監修(アートスペース羅針盤・東京)

最終更新 2015年 8月 03日
 

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