| EN |

未完の横尾忠則
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2009年 10月 14日

≪赤い故郷≫2008年|181.8×227.3cm|アクリル/カンヴァス画像提供:金沢21世紀美術館|Copyright © Tadanori YOKOO

君のものは僕のもの、僕のものは僕のもの

絵画、デザイン、映画、演劇、音楽、文学・・・ジャンルを横断しながら、目にしたもの、耳にしたもの、あらゆるものごとを自身に入力し、独自の流儀で変換出力して世界像を変容する横尾芸術の本質——それは、「未完」であること。

「未完」の横尾ワールドを、表から裏から、中から外から、ひっくり返して探検する本展は、横尾忠則の未完成交響詩。

■アトリエの中に眠っていた未完の絵画大放出
・未発表作品、未完成作品、落選作品<展示室11>

■アトリエの外では未完の絵画大発生
・PCPPPと横尾工房で生まれた作品<展示室7、8、プロジェクト工房>

■未完の人間=横尾少年が自己複製を繰返す未完のイコン
・「ピンクガール」=永遠の少年が夢み続けるマドンナ。<展示室9、10>
・「ルソー」=横尾の複製行為は歴史に残る無礼講<展示室14>
・「Y字路」=行き先不明のY字路こそ横尾の居場所<展示室7・8ほか>

全文提供: 金沢21世紀美術館

最終更新 2009年 8月 01日
 

編集部ノート    執筆:小金沢智


横尾忠則の芸術の本質を「未完」とし、たとえば過去作とそれを元にした近作を合わせて展示することや、ルソーの作品を引用した作品の展示をその元になっている作品の画像(作品が展示されているわけではない)とともにするなど、様々なものからインスピレーションを受け制作する横尾の言わば不安定で動的な点に注目して作品を見せる展覧会。「Y字路」のシリーズでは作品の横に制作風景の映像を流し、展示室毎に滝の絵画やオブジェをさりげなく展示するなど、展示にも工夫が凝らされている。比較的小さな展示室がいくつか組み合わせられているためコンパクトな印象を受けるが、その内容は濃密だ。 なお金沢21世紀美術館から徒歩10分ほどの距離にある石川県立美術館では、「石川県立美術館開設50周年記念
 久隅守景展 −加賀で開花した江戸の画家-」(2009年9月26日~2009年10月25日)を開催中だ。過去の画家が当たり前のように中国や日本の画家の作品の引用を行い、しかしそのことによってこそ自身の画業を深めていることの良質な結果がその展覧会には示されている。「現代美術」ではないからと言って見逃すにはあまりに惜しい展覧会であり、時期が重なっているようであれば本展と合わせて強くお薦めしたい。どちらも過去の作品の優れた引用と解釈から独自の作品に至っているという点で共通している。


関連情報


| EN |