國吉文浩:複合体としての世界 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2013年 5月 30日 |
2013年6月7日(金)から6月19日(水)までの12日間、gallery nearにて、國吉 文浩 展「複合体としての世界」を開催いたします。 國吉は、京都嵯峨芸術大学の油画分野在籍時から、様々な公募展・イベント・グループ展に積極的に出展し、精力的に活動してまいりました。同大学で毎年開催される、学生による自主企画展「one room」をはじめ、京都・宇治の寺院で開催されるアートイベント「萬福寺芸術祭 -EN-」、震災被災地をアートの力で応援するプロジェクト「Artists\' Action for JAPAN」など、今後の活動の幅にも大きな影響を与えるであろう、美術・アートを介した社会的な取り組みにも積極的に出展しており、自らの表現が社会に及ぼす関係を模索しております。 國吉は、アクリル絵具や油絵具、エッグテンペラなど複数の素材を用い、現存する存在・現象をそれぞれの「世界」、それらの繋がりや重なりを「関係」と定義付け、独自の哲学的な思想を画面に表出させます。近年では「世界は同時に存在する」シリーズをメインテーマとして展開しており、1つの画面に、実際に訪れた自然風景を複数描写し、言わば、風景のコラージュのような一種独特の世界観を構築しております。これらのシリーズは、國吉が定義付ける「関係」に由来し、《現存する存在・現象は、全て何かと何かの相互作用(関係)によって創られ、繋がりや重なり、組み合わせによって成立する》とする中、複数の風景を1つの画面で構成することで「世界」における「関係」を可視化しようとするものであります。一見すると風景画のようにも見えるこのシリーズに至る過程は、國吉にとってとても重要で、過去作品と現在の作品を見比べてみても、そこには同じ作家とは思えない程、表現されている画面は多種多様であります。國吉の表現は「世界の根源とは?」という疑問から、「概念」が生まれる以前の「名もないもの」を画面に表出させようとする所から始まっており、過去作品には抽象表現にも見える作品が多く描き出されております。「突入」(2009年)では、点描を組み合わせた大きな画面に「生命(いのち)」の根源を思わせるフォルムを描き、異次元空間にでも向かうような熱量と勢いを感じさせる画面を映し出し、「蠢く」(2010年)では、S150号(2273×2273×100mm)という大きな画面に、「大気中を蠢く生と死の狭間の存在」と位置づけた表現を描き、それらは何か得体の知れない微生物や細胞を思わせるもの、拡大解釈すると我々人類が「世界」で「蠢く」様を描いているようでもあります。 「名もないもの」からはじまり、更に思考し、導き出した「存在と現象」を深く掘り下げる事で至った、《二つ以上のものが関係し合った状態(複合体)こそ「世界」という名に相当する》という思想により、國吉が考える「世界」の基盤である『関係』という存在を表現の軸に、《世界=(存在と現象)の構造》という、現在の制作テーマへと昇華しております。 本展は、過去から現在に至る6つの制作テーマそれぞれの中から、大作、小作品に限らず重要な作品を選出し、新作となる「世界は同時に存在する」シリーズに至るまでの変遷の図式として展示いたします。國吉が表現しようとする「関係」は、生態系や万物における哲学的な関係性を指してはおりますが、《私は、表現し続けたい、 社会と関わっていたい、そして、世界の基盤である『関係』という最も重要な存在を大切にしたいと思う。》とステイトメントにもあるように、國吉自身が、人間=社会との関わりを切望するが故に至った思想のようにも思えます。現代社会において考えざるを得ない、自らも含めた社会との関わり、また、自然との共存を、國吉の表現によって可視化されることにより、我々の身近にある「関係」についても再考するきっかけとなりえるのではないでしょうか。 本展をぜひ、貴媒体にてご紹介いただき、広くPRくださいますよう、何卒よろしくお願いいたします。 [作家コメント] [作家プロフィール] 全文提供:cafe dining near ∽ gallery near 会期:2013年6月7日(金)~2013年6月19日(水) |
最終更新 2013年 6月 07日 |