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Published: May 07 2013 |
「暮 れかかる都会の空を/思い出はさすらって行くの/光る風 草の波間を/かけぬけるわたしが見える」。ユーミンの曲にこんな歌詞があります。大切な人と共有 した時間であっても、人間はいずれ忘れてしまう。そんな切ない気持ちが込められています。風は見えないので「光る風」というのはもちろん比喩ですが、はっ きり思い出せないことだからこそ比喩によってプラスのイメージをもたらすことができます。
芝 田知佳は、記憶から消えてしまいかねない私的でかけがえのない経験を食の思い出に託して作品につなぎとめました。食に関する経験は記憶の深いところに刻ま れるからです。あの日に帰ることはできないし、その日の出来事をはっきり思い出すこともできないかもしれない。しかし、もどかしさだけでも抱きしめていた い。そんな思いがあるようです。
写 真に掲げた作品は「13/02/02 渋谷でえんりょしながらトルティーヤチップスを食べる」(2013年、シルクスクリーン、樹脂顔料、綿布、パネル、 33.3×53センチ)。今年2月2日、友人と六本木や渋谷で遊んだ後、前の職場の先輩と飲食店に行き、トルティーヤチップスを食べながらビールを飲んだ ――。そのときの記憶をテーマに、版画と絵画を組み合わせて制作した平面作品です。
題 材に選んでいるのは、日常的な出来事というよりも本人にとって少しばかり特別な状況。それらを説明しすぎないように色と線でポップに表現しています。タイ トルをヒントに、作家の「その日」の気分を想像するのも楽しそうです。 (正午~午後7時、5月19、26日と6月1日は午後5時まで)
[作家プロフィール] 芝田知佳(しばた・ちか) 1984年兵庫県生まれ。2007年女子美術大芸術学部卒、09年東京芸術大大学院美術研究科修了。11、12年「龍野アートプロジェクト」(たつの市)に参加。
全文提供:TACHIBANA GALLERY
会期:2013.5.15~2013.6.1 時間:12:00 - 19:00 closed on Tuesday 会場:TACHIBANA GALLERY
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Last Updated on May 15 2013 |