村上文子:ねむる前にきこえる音 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2013年 1月 15日 |
2013年1月18日(金)から1月30日(水)までの12日間、gallery nearにて、村上文子 展「ねむる前にきこえる音」を開催いたします。 村上文子は、京都市立芸術大学にて油画を専攻し、2008年から個展開催やグループ展に参加するなど、積極的に作品を発表してまいりました。 彼女が描こうとするものは、意識的、無意識的に限らず、自身の現在の感情を代弁するもの(言葉や文章、音楽など)に触れた時、それらから受けたインスピレーションが、彼女の表現手段「線」に変換され、画面に現れます。ある一定の方向へ向かって浮遊しているような線や、奥底の方から力強く天に向かって一斉に沸きだしているかのような線は、まるで「線」そのものが意識を持っているかの如く、画面を縦横無尽に駆け回り、彼女が受けた直感的なイメージがそのまま投影されたように画面に浮かび上がります。 支持体にはキャンバスや紙、布を用い、油彩、アクリル、水彩、顔料インクと使用する素材は多種多様ですが、画面に現れる表現は一貫して「線」であります。その素材の違いから生まれる「線」も、作品によって様々な表情を見せます。昨今では、墨や鉛筆といったシンプルな素材を用いた作品も多く見られ、単純な画面構成である反面、彼女の内面がより複雑に、色濃く描写されるように変化してまいりました。余計な物を一切排除した上で1冊のノートと鉛筆のみを用い、その時の感情、衝動を一気に解放したような作品「Radio」(2012)は、現代社会に抑圧され、鬱積した感情を吐き出すが如く、押し寄せる感情の波を画面にぶつけることで、彼女の内に秘めた圧倒的なエネルギーを昇華しております。 「雨のような譜」という作品タイトルや、「雲と蝶なら信じてる」(不二画廊 / 2012)といった個展タイトルにあるように、村上が紡ぐ言葉は非常に詩的であり、それらの言葉を生み出す繊細な感性が神秘的な「線」を生みだし、作品からは神々しさをも感じさせます。 過去の個展では、インスタレーションの要素を含めた表現も見られ、彼女の感受性豊かな発想、視点から生まれる表現は、あくまで「線」でありつつも「線」を媒体に更にスケールの大きな作品へと転化され、その可能性は無限に広がりを見せようとしております。 本展は「音」をテーマに制作された作品の中からセレクトし、旧作、新作を交えた作品で構成されます。 形として成さない音を平面において具現化する行為は、音というものが身近な存在であるがゆえに、多くの人にとって興味を抱かせるテーマであります。音には「五線譜」という音を視覚化させる為のフォーマットがあり、「音」と「線」には深い関係性があるように思います。村上の作品を前に耳を澄まし、画面から聞こえる音に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。そこには必ず、村上の「線」によって表現された確かな「音」が奏でられているはずです。 [作家コメント] [作家プロフィール] 全文提供:cafe dining near ∽ gallery near 会期:2013年1月18日(土)~2013年1月30日(土) |
最終更新 2013年 1月 18日 |