| EN |

菅野由美子 展
展覧会
執筆: カロンズネット編集   
公開日: 2010年 12月 10日

《three_6》2009年|oil on canvas|65.2x100.0cm
画像提供:ギャルリー東京ユマニテ
Copyright © Yumiko Sugano

菅野由美子は1960 年東京生まれ。東京造形大学在学中に作品の発表を始め、’86 年のシドニー・ビエンナーレ、’89 年の「第3回アジア美術展」(福岡市美術館、横浜美術館、韓国国立現代美術館巡回)など、数多くの国内外の展覧会に参加。’80 年代前半から女性美術家が流行的に台頭したいわゆる「超少女」の一人として注目を集めました。

当時、菅野は木、鉄、粘土などを素材にコンセプチュアルな立体作品を発表していましたが、’92 年の個展を最後に制作活動を中断していました。そして数年ほど前から、日常身の回りにある小さな置物などを油彩で丁寧に描く仕事を再開。2007 年の15 年ぶりとなる個展では以前の立体から一転、古典的な油彩の小品を発表し好評を博しました。

16-17 世紀のヨーロッパで見られた静物画を思わせる、均一に塗られた背景。その中に菅野自身が様々な国を旅して集めた壷、ビン、器、皿などが、茶事の見立てのように物語に沿って選ばれていきます。しかしながら、それらはどことなく擬人化された肖像画のようでもあり、また、光線までもが計算された静謐な画面は、何事も起こらない淡々と過ぎていく平和な日常の気配を感じますが、その静けさの奥にある力強い存在感は、見るものが不思議と自身の内面と向きあう作用へ導かれるようでもあります。菅野の作品はストイックであるがゆえに、小さな画面から無限の広がりへとイメージは膨らんでいきます。

今回の個展では、前回2009 年以降に制作された新作約20 点を発表いたします。前回までの作品の均一に整然と並んでいた対象物の構図が変化し、新作ではそこに当然あるべきものが忽然と消え、異常なまでの不安感に駆られます。菅野自身が器に対して持つ「空洞」という感覚は、未完であるが故の魅力に満ち溢れています。絶対的な不安感とそれを満たそうとする飢餓感。そして、菅野は対象物がなくなった空気感を描きたいと言います。それは存在したであろうものの気配を描くという究極の絵画かもしれません。

ギャルリー東京ユマニテでは2 年ぶりの新作展となります。菅野の作品を通して絵画と対峙する幸福感をじっくりと味わっていただきたいと思います。今回もお見逃しなく是非ご高覧下さい。

作家コメント
器は、器であるがゆえに空洞をもつ。なにかがその空洞を埋めてはじめて器たりえるとしたら、からの器がそこにあるだけでは本来は不完全なのかもしれない。あるいは、その未完の在り方が、器というものの特質だとも言える。時にその器のまわりには、それを扱う人々の気配がするようで何となく気持ちが揺さぶられるのだが、しかしやはり、ただ目の前でぽっかりと空いているだけの、沈黙の空洞に心惹かれるのである。
なのでこの絵もまた、器のもつ不完全性や不在感の意味を負うのである。見る人たちが大切な何かを込めておけるような、静かな空洞のある絵だといい。

菅野由美子
1960 東京生まれ 1984 東京造形大学絵画科卒業

主な個展
1984, 85, 87, 91 かねこ・あーとギャラリー(東京)
1986 ギャラリー+1(東京) 1988 天野画廊(大阪)
1989, 92 東京画廊(東京) 2007, 09, 11 ギャルリー東京ユマニテ(東京)
2009 ギャルリプチボワ(大阪)

主なグループ展
1985 「第五回ハラアニュアル」 原美術館(東京) 「臨界芸術’85 の位相展」 村松画廊(東京)
「The Figurative Impulse」 ウォーカーヒル・アートセンター(ソウル)
「さまざまな眼-4」 かわさきIBM 市民ギャラリー(川崎)
1986 「第6回シドニー・ビエンナーレ」 NSW アートギャラリー(シドニー)
1987 「第23 回今日の作家展」 横浜市民ギャラリー(横浜)
1988 「TAMA VIVANT'88-世界の模型展」 シブヤ西武シードホール(東京)
1989 「第3回アジア美術展」福岡市美術館(福岡)、国立現代美術館(ソウル)、横浜美術館(横浜)
「プリント・ドローイング・ペーパーワークビエンナーレ」ランゲージ・プラス・ギャラリー(ケベック)
1990 「NEO TOTEM」 スパイラル・ガーデン(東京)
「観念の刻印展」 栃木県立美術館(宇都宮)
1991-92 「ZONE OF LOVE」 東高現代美術館(東京) 西オーストラリア美術館(パース)他 シドニー現代美術館(シドニー) 他
1997-98 「ISLAS/ISLAND」 モダン・アート・センター(カナリア諸島) ラ・グランジャ・アート・センター(サンタ・クルーズ) 現代美術センター(セビリア)
2003 「ART TODAY 2003」 セゾン現代美術館(軽井沢)
2007 「ROUGH AND REFINED」 レオ・キャステリ・ギャラリー(ニューヨーク)
「BTAP-Works in Progress」東京画廊+BTAP(北京)

※全文提供: ギャルリー東京ユマニテ


会期: 2011年2月7日(月)-2011年2月26日(土)
会場: ギャルリー東京ユマニテ

最終更新 2011年 2月 07日
 

関連情報


| EN |