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感じる服 考える服:東京ファッションの現在形
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 7月 28日

ミントデザインズ 2011春夏コレクションより | 写真提供:文化出版局

21世紀に入り、ファッションの世界は大きく変化しました。日本においては、パリ、ニューヨーク、ミラノが発信するハイファッションは かつてのような求心力を失い、ストリートやファストファッションが強い影響力を持つとともに、リサイクルなどの環境問題への 意識が高まっています。他方、ニューヨーク、ロンドン、ミュンヘンで、日本をテーマにしたファッション展が相次いで開催されるなど、日本のファッションは高い関心を集めています。

これまで、イッセイミヤケ、コムデギャルソン、ヨウジヤマモトを頂点とした見取り図のもとで日本のファッションを 概観したり、あるいは、ロリータやゴスロリ、コミックやゲームの登場人物を真似たコスプレなどのストリートカルチャーを軸に、クールなワンダーランドとしての日本解釈が行われてしてきましたが、いずれも「古い枠組みや欧米中心のファッション観にすぎないのではないか」という疑問が日本の中から起こっています。

服には着る人の人生を変える力があります。日本には服飾の豊かな歴史があり、高い創造性を追求してきました。そうした伝統を踏まえつつ、今日のデザイナーには、従来の方法論を単に追従するのではない、新しい服づくりが求められています。とくに近年はビジネスやマーケティングの論理がクローズアップされ、クリエイティブであることの大切さが軽視されているようにも見えます。しかし、ファッションデザインの創造性は価格や機能性よりも、作り手であるデザイナーが着る人々と対話し、感動をもたらすことにほかなりません。流行のサイクルの中で消費されるだけではないファッションとは何なのか——彼らは、日頃からこうした問いに真正面から向き合いつつ、みずからのクリエイションを実践していると言えるのです。

本展覧会は、現状への問題意識を持ち、日本(東京)の足元を見つめ直し、新しい時代のリアリティを追求しつつ、ユニークなクリエイションを展開している10組のデザイナーの仕事を通じて、現在進行形の日本のファッションデザインの可能性を探るものです。オリジナルのテキスタイルを生かした服作り(ミナペルホネン/ミントデザインズ)、既成概念の見直し(アンリアレイジ/ケイスケカンダ)新しい美意識の提案(マトフ/ソマルタ)、多面的な活動(シアタープロダクツ、リトゥンアフターワーズ)、ストリートからの発信(h.NAOTO /サスクワッチファブリックス)など、その特徴はさまざまですが、その根底には、社会転換期の空気を呼吸し、ファッションデザインのありかたを前例にとらわれずにそれぞれの方法で模索する真摯な姿勢が窺えます。

みずから感じ、考えながら、新しいファッションデザインを目指す彼らの服づくりは、それぞれが「ファッションとは何か」という問いに対する多様な回答と言えるでしょう。そして、そこに示されるクリエイションの豊かな未来像はまた、私たちにとっても、ファッションの多様性や新しい魅力を感じ、考えるための最良の契機となるはずです。

出品デザイナー/ブランド名 アルファベット順 [全10 ブランド]
1. アンリアレイジ/ANREALAGE(森永邦彦)
2. h. NAOTO(廣岡直人)
3. ケイスケカンダ/ keisuke kanda(神田恵介)
4. マトフ/ matohu(堀畑裕之・関口真希子)
5. ミナペルホネン/ minä perhonen(皆川明)
6. ミントデザインズ/ mint designs(勝井北斗・八木奈央)
7. サスクワッチファブリックス/ SASQUATCHfabrix.(横山大介・荒木克記)
8. ソマルタ/ SOMARTA(廣川玉枝)
9. シアタープロダクツ/ THEATRE PRODUCTS(武内昭・中西妙佳・金森香)
10. リトゥンアフターワーズ/ writtenafterwards(山縣良和)

全文提供: 東京オペラシティアートギャラリー


会期: 2011年10月18日(火)-2011年12月25日(日)
会場: 東京オペラシティアートギャラリー

最終更新 2011年 10月 18日
 

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