津田直:REBORN “Tulkus’ Mountain (Scene 1)” |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 10月 16日 |
ファインダーを通して古代より綿々とつづく人と自然との関わりを翻訳しつづけている写真家・津田直。 2008年資生堂ギャラリーにて開催された個展 『SMOKE LINE』 では芸術選奨文部科学大臣新人賞(美術部門)を受賞した。 世界を旅し、風景や場所、人と出会い、それらを被写体とするが、それは「写真という装置」を駆使し、「時空を超えたイメージ」、あるいは「イメージの起源」を獲得する作業と言える。 その津田が近年フィールドワークを繰り返しているのは仏教圏である。今回の個展では二度に渡り訪れているヒマラヤの王国・ブータンにて撮影された、下垂するサルオガセや仏塔、濃霧に佇む立ち木、深奥に暮らす僧侶のポートレイト作品などを展示。 作家曰く、新作の完成までには数年を要するとしており、今秋は第一章「トゥルクの山」としての 発表となる。(トゥルクとは、輪廻転生を信じるチベット仏教圏において、化身を意味することば。つまり転生僧をさす。) 時代が益々近代社会の波に呑み込まれつつある今日、あえて旅にカメラとフイルムという至って簡素な装備とアナログな手法を軸として、フィールドへ挑む津田。 その先に浮かび上がる風景は我々にいかなる視線を投げかけているのでしょうか。 津田直(つだなお) 作品集に『漕』(主水書房)、『SMOKE LINE』(赤々舎)、『近づく』(AKAAKA+hiromiyoshii)、『Storm Last Night』(赤々舎)他多数。 ※全文提供: ヒロミヨシイ 会期: 2011年10月29日(土)-2011年11月26日(土) |
最終更新 2011年 10月 29日 |
写真家・津田直による本展覧会では、凛と佇む気配を持った二つの被写体を写した写真が上下に並べられて展示されている。被写体の一つは木、もう一つは少年僧だ。ブータンで撮られた本連作に写る少年僧は、輪廻転生の教えの伝わるチベット仏教の僧。真っ直ぐな瞳で、少しはにかみ、しっかりとこちらに向き合う姿勢の少年僧たちの表情は素朴であり、神々しい。並べられた木の写真は、山水画よろしく霞の中で孤高にそびえ、下に展示された少年僧たちの姿と通じるものがあるように想像させる。
文字では全てを書ききれない奥深さを秘めた霞の白さの中で抽象的とも言えるように存在する木の写真と、少年僧の雰囲気や存在感を正面から切り取った写真。別のベクトルを向いた写真の表現が、一つの存在に向き合うという姿勢で繋がる点も面白い。実際に写真に向き合ってこそ観えてくるものがあるだろう。