木藤純子個展 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 4月 30日 |
木藤純子はこれまで、落ち葉や木々などの自然物、グラスなどの日常品、またLEDや送風機など、さまざまな素材と機材を用いながら、発表空間やその周辺環境の固有性を重要視したサイトスペーシフィックなインスタレーションを発表してきました。 2009年に岐阜県美濃加茂市の〈みのかも市民ミュージアム〉で開催された個展「Calling」は、些細な日常のものごとや光景を丁寧に観察し、その場で感受したもののイメージを顕在化させる木藤の活動の豊かな結実がうかがえる機会となりました。半年以上もの期間現地のアトリエに通い、この地でインスピレーションをうけながら制作した作品が発表されましたが、ここでは、周辺地域に伝わる月見のしつらえと作品展示で構成した「観月会」や“光を起こす”というタイトルの火熾しワークショップなど木藤ならではのイベントも開催されました。 また、同年の春に開催された元立誠小学校でのグループ展「放課後の展覧会」で発表した《over the rainbow》は、どこからともなく聞こえてくるオルガンの音に導かれ、鑑賞者が隠された「虹」の光景に気づくという、寓意に富む神秘的な作品でした。空間と時間との緊密な関係にアプローチする木藤の制作はつねに、目に見えない気配や時の移ろいという想像を喚起する、発見と驚きの可能性をはらんでいます。同時に、密やかでさりげないその佇まいは、日頃われわれが眼にしているものや「見る」という行為の振動をそっと示し、観る者の意識を揺さぶります。そして、光や風、音といった要素を軽やかに取りこむそのあり方は、鑑賞者をそれぞれが記憶やイメージをつないで思い描く“風景”へと誘ってゆきます。 今展で木藤は、〈アートスペース虹〉の空間やそこに差し込む日射し、周囲の環境や季節の特性を意識したインスタレーションを展開します。梅雨のさなかという雨の季節ではありますが、折しも「夏至」という特別な時間を含むサイトスペーシフィックです。周辺の音、湿度の感触、それらの匂いなどとともに、観る者の五感にそっと触れる木藤の新たな挑戦に期待が高まります。ぜひ多くの方にご高覧頂ければ幸いです。 木藤純子 個展 主なグループ展 ※全文提供: アートスペース虹 会期: 2010年6月15日-2010年6月27日 |
最終更新 2010年 6月 15日 |
梅雨空の京都。空も曇りがちだが、アートスペース虹のドアも曇っている。だが、曇るドアを開けると、中は光に満ちた空間が広がる。それは木藤純子の個展「白と黒」の作品である。
壁面には白い紙が5枚、床にはアクリル板が十字にクロスされた立体作品が展示されている。照明は一切用いられず、自然光で満たされた空間に白の紙、透明なアクリル板が光を照り返す。鑑賞者はその日の天候や光の具合、時の移ろいが作りだす現象によって、この空間で起こる「作品」を見ることになるだろう。時間があれば、ギャラリー内から見える「虹」の花々も眺めてほしい。
なお、閉廊時間は日暮れまで。この時期は夜がもっとも短い短夜の時期でもある。鑑賞は夕暮れから夜間をおすすめしたい。