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トポフィリア ①人と、場所または環境との間の情緒的な結びつき ②人々が持つ場所への愛着
これまで数多くの批判に晒されていた立場なき場所である「郊外」を見つめ直し、そこを新たな芸術表現や文化のうまれる場所へと変容させることを目的として企画した展覧会「floating view “郊外”からうまれるアート」。そのステイトメントにおいて私は、東京や京都など大都市にも郊外的な風景が広がる現状を指して「世界の全面的な郊外化が進みつつある」と書いた。もしもその仮定が正しいとするならば、私たちが取り組もうとしているのはもはや「郊外」という地理的に限られた区域に留まらない。すべての人々が踏みしめ、生きるためのインフラである「場所」そのものに向き合うこと。それが floating viewの次なるテーマである。
交通網や移動手段の発達による空間の圧縮、「どこでも同じ」な風景の広がる郊外化、こことは違う場所に別の空間をつくりだすVR(仮想現実)の登場などによって、私たちにとって「場所」は相対的にその重要性が薄まったように見えた。しかし現実の地理に規定された情報技術であるAR(拡張現実)の登場が象徴するように、近年、「場所」は再び重要性を増している(アニメの聖地巡礼や工場萌え・廃墟萌え・団地ブームなどもその一端を為していると言えるかもしれない)。また2011年3月の東日本大震災、ならびに福島第一原発の事故は、私たちの「場所」観をさらに大きく揺るがすものだった。地形そのものが変わってしまう地震や津波、単純な距離では計れない放射性物質飛散の恐怖の中で、「私(あなた)がいま、どこにいるのか」という「場所」の問題を誰もがより切実に考えるようになった。 このような状況で、私たちは今後どのようにして「場所」と関係していけば良いだろうか。展覧会のタイトルに掲げた「トポフィリア」は人類学者イー・フー・トゥアンによる造語で「場所への愛」を意味するが、では現在、私たちはどのように「場所」への愛(憎)を表現することが出来るだろうか。
floating viewに参加する作家たちは、それぞれ自らの扱うメディア・表現を通して「場所」の問題に取り組み、2011年9月現在、日本、関東、という時空における自らの立ち位置を確かめ、展覧会場に刻み付ける。ここから、新しい「場所」とのかかわり合いの方法を見出すための第一歩を踏み出すのである。(佐々木友輔)
出品作家 石塚つばさ、笹川治子、遠藤祐輔、門眞妙、ni_ka、田代未来子、小田原のどか、Mu
ウェブサイト: http://qspds996.com/floating_view/
書籍「floating view "郊外"からうまれるアート」刊行記念 「アーティストの目に映る郊外」 2011年2月にTWS本郷で行われ好評を博した企画展「floating view "郊外"からうまれるアート」。その展覧会カタログ+論考集の刊行を記念したイベントを行います。第一部は、floating view企画者であり映像作家の佐々木友輔による映画『新景カサネガフチ』の上映。ある郊外都市の歴史とそこに住む夫婦の物語をシンクロさせた風景映画です。第二部では、森美術館での大規模な個展も記憶に新しい美術家・小谷元彦さん、美術ジャーナリストの藤原えりみさん、SF・文芸評論家の藤田直哉さんをお招きしてのトークを行います。他では見られない組み合わせの豪華なゲスト陣で、郊外とアートの可能性について語り合います。
【イベント概要】 日時|2011年10月2日(日)18:00開場/18:30開演 料金|当日¥1500 予約¥1300(ドリンク代込み)
会場|UPLINK FACTORY 東京都渋谷区宇田川町37-18 トツネビル1F UPLINK FACTORY http://www.uplink.co.jp/factory/ 来場特典|「floating view "郊外"からうまれるアート」を特別価格で販売します。 お問い合わせ|
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ウェブサイト|http://d.hatena.ne.jp/floating_view/ 書籍詳細(amazon)|http://www.amazon.co.jp/dp/4990583507/
※予約: このイベントへの参加予約をご希望の方は、(1)お名前(2)人数(3)住所(4)電話番号以上の要項を明記の上、件名を「アーティストの目に映る郊外」として、
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【第一部 映画『新景カサネガフチ』上映】 佐々木友輔 監督作品『新景カサネガフチ』 データ|メディア:DV/制作年:2010年/時間:67分 スタッフ|朗読:菊地裕貴/出演:石塚つばさ/音楽:田中文久/ロゴデザイン:藤本涼 概要|2011年、関東鉄道常総線に新しい駅ができて、その土地の名前も「ゆめみ野」に変わった。ゆめみ野の誕生と時を同じくして結婚し、街のめまぐるしい変化に寄り添って暮らしてきた一組の夫婦は、ある出来事をきっかけにして、街の歴史と夫婦の時間を、交差させ、かさね合わせるようにしながら追憶していく。そこに浮かび上がってくるのは、いつか夢に見た景色——累(かさね)伝説発祥の地、累ヶ淵。『夢ばかり、眠りはない』に続く、「風景」映画最新作。
【第二部 トークイベント「アーティストの目に映る郊外」】 郊外は本当に「均質で」「退屈で」「何もない」のか。その場所からうまれる作品、その場所でしか有り得ない表現を考えることが出来ないだろうか。彫刻、映画、文学、SF……様々なジャンルをまたぎ、全く異なる視点を持つ4名が、郊外からうまれるアートの可能性を議論する。 ゲスト|小谷元彦(美術家・彫刻家)、藤原えりみ(美術ジャーナリスト)、藤田直哉(SF・文芸評論家)、佐々木友輔(映像作家・企画者)
トークゲスト 小谷元彦 odani motohiko 1972年京都府生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻科卒業。同大学院美術研究科修了。彫刻概念をベースに身体の変容や幻影を表現する。個展にPhantom-Limb(97年、P-HOUSE、東京)、Modification(04年KPOキリンプラザ大阪、大阪)、ERECTRO(04年、山本現代、東京)、SP2”New Born”(07年、山本現代、東京)、SP4 "the specter" in modern sculpture(09年、山本現代、東京)、Hollow(09年、メゾンエルメス、東京)、幽体の知覚(10年、森美術館、東京、他3館巡回)など。国内外のグループ展やイスタンブール・ビエンナーレ(01年)、光州ビエンナーレ(01年)などの国際展も多数参加。03年にはヴェネチア・ビエンナーレ日本代表作家として参加。
藤原えりみ fujihara erimi 山梨県生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了(専攻/美学)。著書『西洋絵画のひみつ』(朝日出版社)。共著に『西洋美術館』『週刊美術館』(小学館)、『現代アート事典』(美術出版社)、訳書にH・リード『近代彫刻史』(言叢社)、C・グルー『都市空間の芸術』(鹿島出版会)、R・アスコット『アート&テレマティークス』(NTT出版)、M・ケンプ『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(大月書店)、C・フリーランド『でも、これがアートなの?』(ブリュッケ)など。武蔵野美術大学・女子美術大学・東京藝術大学非常勤講師。
藤田直哉 fujita naoya SF・文芸評論家。1983年、北海道札幌市生まれ。2008年に「消失点、暗黒の塔」で第三回日本SF評論賞・選考委員特別賞を受賞しデビュー。同年、講談社BOX「東浩紀のゼロアカ道場」に参加し、デジタルビデオカメラ「Xacti(ザクティ)」を用いて撮影した映像を動画共有サイトにアップロードするといった批評活動(ザクティ革命)により注目を集める。共著に『社会は存在しない』『サブカルチャー戦争』などがある。東京工業大学社会理工学研究科価値システム専攻博士後期課程在学中。
佐々木友輔 sasaki yusuke 1985年、神戸生まれ。映像作家、floating view 企画者。映像表現を中心に、アートプロジェクトや舞台芸術など様々な領域を横断して活動している。主な上映・展示に、バンクーバー国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭、ロンドン映画祭、平山郁夫賞受賞顕彰展「デジャメーヴユ 既/未視感」、『夢ばかり、 眠りはない』上映(UPLINK FACTORY)、個展上映「新景カサネガフチ」(イメージフォーラム・シネマテーク)など。東京芸術大学大学院博士後期課程在学中。
全文提供: 佐々木友輔
会期: 2011年9月30日(金)~2011年10月12日(水) 会場: 新宿眼科画廊
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