玉野大介:亡霊 |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2010年 9月 21日 |
玉野大介は分類不能の作家です。現在のアートシーンを見れば作品が内外のどんな流れの影響下にあるものか直ちに分ることが多く、それだけオリジナルな作家、作品が少ないわけですが、玉野はその少数の例外にあたる作家です。しかし奇をてらうため意図的に分類を回避しているのではなく、イメージに結実していくその発想自体がもともと私たちの常識的な回路を越えているのです。 玉野の作品の前に立つと誰しもその奇妙さ、チグハグさ、不気味さにインパクトを受けます。しかしそれを有効に説明できる言葉が見つかりません。画面の一角からある印象を持つとしても、他の部分ではそれと反対の印象を受け、結局説明しようとする言葉は立ち尽くしてしまい、ただ作品だけがそこに存在感をもってあるという風なのです。 それでも玉野の作品は「謎」としてあとを引き、記憶にとどまる力を持っています。一度でも彼の作品を見れば忘れることはできません。 音楽と同様に絵画は言葉を超えた世界を表現しようとする試みですが、その意味で玉野はどこまでも絵画の持つ力を信じている作家であり、しかもアカデミズムやコマーシャルなトレンドとは無縁に、ひたすら自分の思考や感受性に忠実に描いてきた希有な作家です。 昨年はカフカだけを取り上げた個展「奇跡のカフカ」を開催しましたが、本展は今でも神社仏閣に遺跡のように残る石灯籠と古代史上に名を残す人々の怨念を絡ませた連作を発表いたします。このテーマだけでも作家がいかにトレンドから無縁かが分りますが、日本の作家として日本の精神と風土をもう一度掘り起こしていこうというモチーフが背景にあります。 掲載した画像をご覧いただくだけで、玉野の作品は私たちの言葉による説明が結局はほとんど意味を持たないほどの力をもって完結していることを感じていただけると思います。どうか本展ご期待ください。 玉野大介 Daisuke Tamano ※全文提供: unseal contemporary 会期: 2010年10月9日(土)-2010年10月30日(土) |
最終更新 2010年 10月 09日 |