北城貴子:Circulation of the light |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2010年 6月 13日 |
満たされた光と空気に包まれ、画中に佇む自身にふと気付かされる、そのように自然と観る人を引き付ける魅力を放つ絵画を描くことのできる希有なアーティスト、北城貴子。当画廊では3年振りとなる個展を開催いたします。 北城は、森の木立ちや池の水面など自然の中の光を題材に、その場の奥行き・漂う気配を、自身と眼前の風景との間に満ちた光から捉え、躍動感のあるタッチで繊細に、またあるときは大胆にキャンバスへと描いてゆきます。具象と抽象を行き来するような画面からは、彼女が目にしたであろう場の臨場感がありありと感じられるだけでなく、観る人それぞれの記憶の断片にリンクするような、独自の魅力を感じとることが出来ます。 2004年の京都市立芸術大学大学院博士課程修了後間もなく、VOCA展への推薦による出品、大原美術館主催のアーティスト・イン・レジデンス(ARKO)での滞在制作と展覧会、東京INAX GALLERYでの個展など、その類い稀なセンスと研ぎ澄まされた表現力は、早くから美術関係者の間で注目されてきました。とくにARKO以降、抽象的な色合いの強かったそれまでの作風から、樹木や草花が発する瑞々しい生命力を感じられる具象的なイメージを画面に取り入れたことで、作品は観る人を画中へと誘い、より密接な交感へとつながる強度を増すこととなりました。 今回の展覧会では、外部の光を感じ、自身との距離、関係性を描いてきたこれまでから、さらにその光と一体化し、その循環に自身を含み、解き放つような絵画作品を発表予定。 見ること、感じることの本質を常に深く探求し、紡ぎ出されるイメージを的確に自己の表現として昇華する北城貴子の新作展です。 Circulation of the light 全文提供: ギャラリーノマル 会期: 2010年7月10日(土)-8月7日(土) |
最終更新 2010年 7月 10日 |
2006年の大原美術館におけるレジデンス以降、より具象性が増した瑞々しい作品を手がけている北城貴子の新作個展が大阪・ギャラリーノマルで開催されている。
今回の個展では200号2点を中心に約13点が展示されている。これまでの余白を生かした作品からすると画面を覆いつくす色彩に戸惑いを覚えなくもない。だが、眩しいくらいに色と色の重なりが密度を生み出し、目眩を覚えるような光の絵画が生まれている。それは植物を見ていたはずなのに、気がつけば白や緑、紫の絵の具の筆触を見ていたと気がつくような、絵画とイリュージョンの狭間のレイヤー層に視線が微妙な階層移動をするような絵画経験である。
本展を見る際には作品から距離をとって見てみてほしい。近距離では得られない全体と部分が作り出す光の循環を見ることができるだろう。