| EN |

堀浩哉:起源 − naked place
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2011年 6月 23日

堀浩哉 制作風景(アトリエにて)Copyright© HORI Kosai | Courtesy Mizuma Art Gallery

画面に一筆入れる。その一筆を自分がどう読み取るかを見ている。それから向こうが空間として要求してくるものを次の一筆として入れる。そしてまたどう読み取るか。それを繰り返していく――その都度(初心に戻り、)ふっと無意識から湧き上がる何かが画面に加わっていく…現代美術作家、堀浩哉のひく一本の線はそうしてできていきます。

キャンバスにアクリル。さらに岩絵具、墨、と、画材は日本画に近いものです。しかし出来上がるものは、日本画でも洋画でも日本現代美術絵画でもありません。堀がいるのは、あくまで絵画の境界線上なのです。

堀はあるとき(もう40年も前のことですが)、パフォーマンスを通して「絵画の外側」に渡り、絵画を捉え直そうとしました。既存の「絵画の内側」に居ては、絵画の再発見はありえない、と。10年ほどして「絵画の周縁部は周縁部でしかない。本質の実現には、絵画の中心から」とまたもう一度、堀は筆をとり絵画と向き合います。そうして内から外へ、外から内へと、行き来を繰り返すうちに、ゼロ地点のような内と外の境界線上で、堀だけが見ることのできる世界の開拓が始まりました。

日本で4年ぶりとなる今回の個展では、大作絵画に、出力プリントの上に描いたもの、パフォーマンスの上映と、異なる複数の手段で展開されます。私たちは、誰も入ったことのない領域「naked place(裸の土地)」で、堀が歩む未踏の軌跡を垣間見ることになるでしょう。

この機会に是非ご高覧くださいますようお願い申し上げます。

堀浩哉個展『起源 − naked place』について
-堀浩哉

3・11の大惨禍を前にして、ぼくらはみんな言葉を失ってしまった。それから一ヶ月して被災地を歩き、ぼくは言葉を失うと言えることの甘ささえ噛み締めた。 それでもなお、ぼくは言葉を紡がなければならない。ぼくは描かなければならない。でなければ、ぼくもまた、あのツナミの底に引きずり込まれてしまうから。いや、もうすでに海の底なのか。ならばなお、ぼくは言葉を探さなければ、絵を探さなければ。

ミヅマアートギャラリーでは初めての、そして国内では4年ぶりの個展になります。 前回の個展は2007年11月〜12月に、ギャラリー山口(東京・京橋)で行いました。海外では、その後も2008年と2010年の二回、韓国のソウルと釜山の画廊で同時個展を開いていますから、制作と発表活動が滞っていたわけではありませんが、国内では久しぶりになります。

昨年6月には、ギャラリー山口での個展が決まっていたのですが、ご存知のように昨年1月にギャラリーが倒産し山口さんも亡くなり、個展は消滅しました。山口さんとは、1980年の開廊以来30年に及ぶ付き合いでしたし、その前年にはやはり長く付き合ってきた村松画廊も閉廊し、さらに前にはギャラリー手やギャラリー上田など、ぼくが付き合って来た画廊はすべて閉廊するか縮小してしまっていたので、その終焉はぼく自身にとって一つの時代の終わりを強く意識せざるをえないものでした。この国を長く覆って来た停滞感、閉塞感と相まって、ぼくにとっての「終わり」の感慨はことさら強いものでした。

しかしその一方で、ここ数年ぼくは韓国と中国に出かける機会が多く、両国の数多くのアーティストたちと交流し、若く勢いのあるアートシーンとも関わりながら、もう一つの別の「はじまり」の予兆をも感じ続けてきました。

ミヅマアートギャラリーの三潴末雄さんとぼくは同世代であり、ぼくらはお互いにまだ20代前半の1970年に出会っていました。そのころはまさか三潴さんが将来アートシーンに登場するとは思いもしていませんでしたが、強い印象のある出会いであり、その後も彼のことを忘れることはありませんでした。自分にとって出発点の時代に出会った三潴さんと、今この時期に、再びこうして出会っていることに、不思議な縁を感じています。

3・11以降の日々の中で、「終わり」と「はじまり」が前後もなく同時に共存し、せめぎあっているという感覚が、ぼくにとってはさらに決定的なものになっています。そこから、新たなシリーズが立ち上がってきました。とはいえ、この先はたしてどこへ行くのかはまだ見えていません。しかし、動き出そうという意志だけは明瞭です。

展覧会のオープニングの日には、「堀浩哉+堀えりぜ」のユニットによるパフォーマンス『記憶するために』を行います。どうぞご高覧ください。

堀浩哉 プロフィール
1947年富山県生まれ。1967年に多摩美術大学絵画科油画専攻に入学し、1970年中退。1969年に初めて作品を発表。その後主にインスタレーションやパフォーマンスを中心に活動する。1979年から絵画を中心に制作し、アクリル絵具に加えて岩絵具、墨、オイルスティックなどを併用。また、1988年からは基底材としてキャンバスに和紙を使用。1998年にパフォーマンスを再開し、翌年堀えりぜ・畠中実と、ユニット00を立ち上げる。さらに映像作品や出力プリントの上に描く作品、サイトスペシフィックな作品なども手がける。1977年パリビエンナーレ、1984年ベニスビエンナーレなどに出品。近年の主な展覧会に、「堀浩哉展」SPACE HONGJEE、Gallery Yookgongsa/韓国、第3回大地の祭り・越後妻有アートトリエンナーレなど。

全文提供: ミヅマアートギャラリー


会期: 2011年7月20日(水)-2011年8月20日(土)
会場: ミヅマアートギャラリー
オープニングレセプション: 2011年7月20日(水)18:00 - 20:00 
※19:30より「堀浩哉+堀えりぜ」によるパフォーマンス

最終更新 2011年 7月 20日
 

関連情報


| EN |