SLASH |
展覧会 |
執筆: カロンズネット編集 |
公開日: 2011年 2月 04日 |
今一番旬なアーティストを複数人とりあげ、シリーズで展開していく企画展。 「SLASH」とは、ファンが作った2次創作作品(ファン・フィクション)の中で、キャラクター同士が結びつくようなカップリングを示す際に間にスラッシュ記号( / )を入れたことから、それを総称して「スラッシュもの」と呼ばれています。この企画『SLASH』では、単に2人のアーティストを並べて展示するだけではなく、事前に幾度となくミーティングを重ね、お互いのイメージや意識を深く理解するところから始めていきます。その上で、それでは作品を通して、自分たちは社会にいったい何を提示できるのか、何がおもしろいのか、何が可能であるのかを話し合い、展示プランを決めます。また、それはDMのデザインにも及び、2人の共通する目的からキーワードを上げ、アートディレクターのCRAFTIVEとともに一つの作品を生み出すように制作されてい ます。 第2回目となる『SLASH - 2』(2/16 - 27)では、台湾のレジデンスから帰って来たばかりで、「群馬青年ビエンナーレ2010」にも入賞した井出賢嗣(1981年神奈川県生まれ)と、「VOCA2009」に選抜された苅谷昌江(1980年高知県生まれ)の2人展を開催します。 続いて『SLASH - 3』(3/3 - 20)では、2008年の「ART AWARD TOKYO」にてグランプリを受賞した大田黒衣美(1980年福岡県生まれ)、高橋コレクション日比谷「neoneo展」をはじめ、渋谷「SUNDAY ISSUE」での個展も控えている谷口真人(1982年東京都生まれ)を連続でお見せします。 『SLASH - 2』には“アジア”という共通点が1つあります。井出賢嗣は、昨年台湾にレジデンスをしていた時に出会った台湾人との関係、またそこで学んだ風土や歴史、国民性から、自分が日本人であるということ、あるいはアジア人であるということを以前より強く意識する結果となりました。また苅谷昌江の新作には、戦争で中国に移住した伯母の肖像が描かれています。国や政治に翻弄され、自らの意志とは関係なく進んでいく人生の中で、まず人間としての価値観や生き方を必死に守って生きた強さに、自身を重ねています。 『SLASH - 3』の大田黒衣美は、板ガムや石膏、ビニールなどの一見アート作品には不釣り合いな素材も取り込んで制作します。例えばブルーシートであれば、「新築の家も包めば、死体も包む」と話しており、その物質が持つ多様性や強さ、逆にその儚さや所在の危うさを丁寧に壊さず抽出するところから始まります。谷口真人の代表作に、絵の具の塊の裏側に描かれた女の子の像を、鏡に反射させて映した作品があります。私たちはそのキャラクターを目にすることはできても、決して触れること ができません。それはまるで今の人間の存在感そのものであり、それでも無理やり触れようとする行為が作品となって現れています。 その時代の流行や、1人のアーティスト、キュレーターの視点に委ねるのではなく、自分たち自身でそれぞれが考えを出し合い、自らの手でまず価値をつくっていくことこそが必要であると考えています。個人で完結するのではなく、また勝ち負けではないところで、それぞれの思想が交わること、そこから生まれる想像力の多様性を信じて探っていきます。 ※全文提供: island MEDIUM SLASH-2( TERRA + island WINTER COLLECTION) SLASH-3 会場: island MEDIUM |
最終更新 2011年 2月 17日 |