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Published: September 18 2012 |
この度、SATOSHI KOYAMA GALLERYでは、萱原里砂の個展「Appearance」を開催いたします。萱原は今回の新作で、刻々と変化する水面と、そこに映り込む虚像が複雑に織り成す一瞬の美の世界をフレームに納めており、鏡面に写る虚像をレンズを通して反転させた像に、えもいわれぬ存在感の強さを感じさせます。萱原は、人間の能力を遥かに超えて進化するテクノロジーに現実感を持てない現代人にとって、リアリティとは一体何かを、問いかけているのかも知れません。 本展を是非ご高覧くださいますよう、また、貴誌、貴社にてご紹介下さいますよう宜しくお願い申し上げます。
萱原里砂は一貫して水の様々な表情や属性、あるいは水面や水辺とその境界などを被写体として作品を展開して来た作家である。そのような被写体を通しつつ、彼女は視覚と認識/認知といった問題を主要なテーマとしてきた。 「風景考」のプロローグ展では「Mirror」により、実像と虚像が反転しながらも完全にはシンメトリーではない空間を、大型カメラのスクリーンに映る映像の愉悦から切り離すようなストイックな構成で周到に切り取ってみせた。新作の「Appearance」においてその探求は一層進められている。その中の一部は、遠さと近さ、実像と虚像、前景と奥行き、光と影、といった対立するものが混然一体となり極めて高い平面性を獲得するに至っている。 そして水面を通した屈折や反射、拡散や散乱といった光の効果によってさらに複雑な要素が絡み合い、いつしか一つのシンフォニーが奏でられ始めている。それらは時に落ち葉や枝の切片、水底まで届く光といった非常に小さな音や楽器によって演奏されている。ハーフミラーでありスクリーンであり同時に、萱原の言う「風景の皮膜」としての水面と、それを囲む世界全体の注意深い観察者でなければ見落としてしまうような細部と細部の響き合いといえよう。しかしその交響に気がついた時、全体と細部を往還し、愉しみ、認識する眼はどこまでもどん欲にその美を堪能し、旅していくこととなることと思う。(勝又公仁彦)
[作家プロフィール] ■萱原里砂(1969年生) 1969年東京都生まれ。1990年、武蔵野美術大学短期大学部卒業。1995年、東京綜合写真専門学校卒業。 2001年から一貫して風景をテーマとした写真作品を発表している。個展に2001年「watershed」ライトワークス、2005 年「The Scenic」A-things、2006年「LIMIT」void+など。2008年には世田谷美術館区民ギャラリーにて「写世術 photo projects vol.1 萱原里砂」を開催。主なグループ展に2002年~2003年「BLACK OUT / 現代日本写真展」(ローマ、パリ、東京を巡回)、2009年「歸去來兮(かへりなん いざ)久万再発見 旅人のレンズ」久万美術館(愛媛)など。最近は日本画の風景表現を参照しつつ、水を思考の手がかりとした作品を展開している。東京綜合写真専門学校非常勤講師。
オープニングレセプション:2012年11月3日(土)17:00-19:00 アーティストトーク:2012年11月3日(土)15:00-17:00 ※詳細は後日HPにて告知いたします
全文提供:SATOSHI KOYAMA GALLERY
会期:2012.11.3~2012.11.24 時間:13:00 - 18:00 休日:Close: Mon, Tue, Sun, National holidays 会場:SATOSHI KOYAMA GALLERY
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Last Updated on November 03 2012 |