齋藤陽道:絶対 |
展覧会 |
執筆: 記事中参照 |
公開日: 2011年 6月 23日 |
「絶対」って口をつく気もち、「それでも」って握りしめる気もちがシャッターを押した。 太陽の下、顔かたちは溶けても、光そのもの、唯一無二の存在となる。 齋藤陽道の「絶対」は、光と偶然性が生む写真の根源的な力、新しい表現を指し示す。 齋藤陽道は、国内外で広く活躍する写真家を多数輩出する新人写真家の登竜門、 キヤノン写真新世紀にて2009年に佳作(飯沢耕太郎選)、2010年には優秀賞(佐内正史選)の受賞を果たし、また今秋には赤々舎よりデビュー写真集の刊行が決定するなど、今注目を集める期待の新進写真家です。 齋藤はろう者であり、障害者プロレス団体「ドッグレッグス」に所属する格闘家“陽ノ道”でもあります。いくつもの顔を持つ彼に共通していることは、積極的に人を知ろうとするエネルギーであり強さ、優しさでもあります。 本展は、そんな齋藤ならではのまなざしが「光」によって表現された未発表のシリーズ『絶対』による初個展となります。この機会にぜひご高覧ください。 齋藤 陽道 Saito,Harumichi 全文提供: A/A gallery 会期: 2011年7月6日(水)-2011年8月12日(金) |
最終更新 2011年 7月 06日 |
今日、一番初めに観たものを思い出せるだろうか。天井か、寝具か、家族か、様々な答えが返ってくるだろう。しかし、何を見るにせよ、目が一番最初に触れるのは、光である。光が無ければ、私達は、色も形も捉えられない。
齋藤の写真では、被写体が太陽の光を背負って撮られている。強烈な逆光で、撮影されていた人物の顔面が白く抜けている。光によって画像が固定される「写真」というものが、光によって対象が消されるというパラドックスに、面食らう。しかし、その写真には何も写っていないわけではない。目が被写体を捉える一瞬前の時間が固定されているかのように見える。あるいは、見つめ過ぎて、観えなくなっているのかも知れない。
作品を観ていると、光が様々な表情を想像させ、愛しい存在を思い出すことになるだろう。様々な思いを鑑賞者に抱かせる、豊かな写真展だ。