展覧会
|
執筆: カロンズネット編集
|
公開日: 2009年 12月 23日 |
創作について 小泉朋美の育った家は、代々山を持っており、現在でも、海の近くのその山の脇で暮らし、畑もある。昔は米も作っていた。幼少の頃からの生い立ちを冒頭に書くのは、小泉の創作の原点が、幼い時期からの記憶で成り立っているものという気がするからだ。真夏の帰り道、田んぼのただ中に自分がぽつねんと佇む。風のにおいを受けとめる。月と太陽を同時に見る。虫や小動物たちが身近にいる。風の強い日に部屋の中でその勢いのある音を聞く。雨の降りしきる湿った一日を感じる。そんな、小さな記憶の断片。その心に留めておく小さなモノは、ただ、溜まっていく。混ざり合うようで合わない。積み重なって 新たな形に常に変化してゆく。 創作にあたって、小泉が強く意識するのは、あいまいな“幅広い境界線”だという。時間的な境目である昼でも夜でもない夕刻や学生時代の放課後。すこし時間軸が長めの夏とも秋ともいえない季節の間。また、地勢的な境である海と山の狭間にいる自分。さらに、少女と大人の中間の思春期などなど。それらのどっちつかずのハザマ感は、心の中に溜まっている記憶のピースと共に、乾きの遅い油絵具によって、ゆっくり確実に、でも何かをはっきり提示すことなく曖昧なまま作品に現わされる。それは、自然によって揺蕩わされている受け身の自分であり、また行ったり来たりを繰り返す“ただよう”ままにしておく気持ちの在り方とも言えるだろう。画面の純真無垢な少女の瞳は、答えは出さなくてもいいよ、とこちらを見つめ返す眼差しなのかもしれない。鑑賞者はその意味と無意味のあいだを、ずっと謎かけのように問い掛けられる。 略歴: 1984 神奈川県生まれ 2008 多摩美術大学 美術学部絵画学科油画専攻 卒 展覧会: 2008 グループ展「Live with Animal」展 NYウイリアムス゛ハ゛ーク゛ ニューヨーク、グループ展「Session48」展 東北芸術工科大学 山形 2008 GEISAI#11 東京ヒ゛ック゛サイト 東京 ※全文提供: Ohshima Fine Art
|
最終更新 2010年 1月 16日 |