展覧会
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執筆: カロンズネット編集3
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公開日: 2013年 2月 25日 |
この度、伊島薫の新シリーズを発表いたします。 伊島は広告写真の第一人者として活躍する一方で 80 年代より作品制作を始め、特に木村佳乃などを起用した「死体のある風景」シリーズでは高い評価を受け国内外で個展を数多く開催してきました。特にトイツ、イキリス、イタリア、アメリカなど欧米各地では大きな反響を呼び、特に 2000 年以降は毎年各地で個展が開催されています。 また、2012 年には展覧会のメインビジュアルとしても起用され、その作品か大きな存在感を示した豊田市美術館「カルペ ・ディエム」展は約 2 万人を動員し、各方面で話題を呼びました。 2010 年のニューヨーク以来 3 年ぶりとなる今回の個展では、人体の「美しさ」とは何か自らに問い続けてきた伊島独自の視点から生まれた新シリーズを発表します。このシリーズでは高精細なデジタルカメラで、私たちの身体をありのままに写すことで「正直な」人体のヒシュアルに迫りました。 肌に残る古い傷跡や毛穴のひとつひとつまでも容赦なく捉えたこれらの作品は、私たちの嘘偽りのない姿を直視する初めての経験となるでしょう。また本展は、幼い子とものころから持ち続けてきた人の身体に対する率直な好奇心への最もシンプルな答えを提示しているとも言えます。
しかし、初めて目の当たりにする「正直な」の人体の持つ恐ろしいほどのリアリティは、戸惑いとともに「果たして私たちは美しいのだろうか」という疑問をひとりひとりの内に呼び起こさずにはいられないでしょう。伊島は「これは私かもしれない」と思わせるほど観客と近似したモテルを起用することで、美しいのだろうかと疑い始めた対象が写真とその中のモテルたちではなく、 実は作品を鏡にした私たち自身という構造を巧みに作り出しています。 伊島の新しい表現世界をこの機会にぜひご高覧ください。
[作家コメント] 「あなたは美しい」
あなたはここまで拡大された人物のリアルな像を見て美しいと感じますか、それとも気持ち悪いと感じますか。 離れてみたらきれいだけど、近くで見たら気持ち悪い? デジタル画像処理が進歩した現在、ファッション写真や広告写真、TVCM などでは、モデルの肌をきれいに修正したり腕や脚を細くしたりすることはあたりまえのこととなっています。そして「写真が真実を写すものである」というのはもはや過去の神話となってしまいました。しかしそこにはまるで「真実ほど見るに値しない醜悪なものはない」と言わんばかりの現代社会の美意識が現れています。 長年にわたってファッション写真や広告写真に携わってきた私自身が、これまで当然のことのように信じて行ってきたことと、それと同時に疑問に思ってきたことに対して、今、ひとつの答えが出せたと感じています。
現実という風景には見るべきものがたくさん含まれているということ。 高精細なデジタルバックで撮影し可能なかぎりに拡大した人物像からは、多くのことを読み取ることができます。まるで野山に入って草むらの中で今まで出会ったことのない小さな虫に出会うかのように。 それを美しいと感じるのか、気持ち悪いと感じるのか。 私はもう一度それを問いたい。 そして、そんな私の思いを受け止め、被写体になることに同意してくれたモデルの人たちに私は敬意を表すと同時に素晴らしいと讃辞を送りたい。 「あなたは美しい」と。
2013 年 伊島薫
[作家プロフィール] 伊島薫 1954 年京都生まれ。東京都在住。 主な個展は「One Sun」(Von Lintel Gallery、ニューヨーク、アメリカ;Kudlek Van Der Grinten、ケルン、ドイツ、2010 年)など多数。主なグループ展に、「カルペ・ディエムー花として今日を生きる」(豊田市美術館、愛知、2012 年)などがある。
作家とのオープニングリセプション:3月23日(土)18:00~20:00
全文提供:AI KOWADA GALLERY
会期:2013年3月23日(土)~2013年4月27日(土) 時間:12:00 - 19:00 休日:日・月・祝 会場:AI KOWADA GALLERY
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最終更新 2013年 3月 23日 |