展覧会
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執筆: カロンズネット編集3
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公開日: 2013年 4月 09日 |
遠い記憶の中に浮かぶ、静謐で透明な世界
現代を代表する彫刻家、舟越桂。楠に彩色を施し、大理石の瞳をあしらった人物像を創る舟越は、東京藝術大学大学院を卒業後の1980年代初頭から現在に至るまで、一貫して人間の姿を創り続けています。具象彫刻の世界を逸脱し、より自由な幻想性を備えた舟越の作品は、その独特の存在感と奥深い表現から、ヴェネツィア・ビエンナーレなど数多くの海外の展覧会でも反響を呼び、国内だけでなく世界中から注目を集めています。
遥か遠くを見つめて、静かに佇む人物像。その瞳は、人間の内側を映し、静謐で気品溢れる存在感の中にも、誰もが胸の内に秘める喜びや哀しみなどの感情を抱え、永遠ともいえる時間を封じ込めています。近年は、新たな制作領域として、性別や肉体を超えた両性具有のスフィンクスシリーズをテーマとして掲げ、人間を超越した不思議な人物を描いています。これは、本来の人間ではない姿を描くことによって、人間の本質的な部分を表すという、時代を経ても変わることのない人間の深い精神性を、長らく追求してきた者だけが表現することの出来る訴えの証であり、形なのでしょう。
本展は新作7点を中心に約30余点を展開予定。今回の新作は、初の試みであるメゾチントによる段階的な黒から白への濃淡と、濃密な黒が特徴的です。時代と共に変貌を遂げる作品の表現に対し、内に宿される変わらない人間性は、めまぐるしく変化する日々の中で、我々に忘れてしまいがちな何かを気付かせてくれます。遠い彼方を見つめるその瞳は何を映しているのでしょうか。舟越が、それぞれの人物像に新たに授けた森羅万象を、静かに感じてみては。
[作家プロフィール] 舟越 桂
1951年 岩手県生まれ 1975年 東京造形大学彫刻科卒業 1977年 東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了 1986年 文化庁芸術家在外研修員としてロンドンに滞在(-\'87) 2009年 毎日芸術賞受賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞 2011年 紫綬褒章受章 中原悌二郎賞本賞、平櫛田中賞など受賞多数
◆サイン会開催◆ 4月13日(土) 16:00~ ※作品、書籍のご購入者を対象とさせて頂きます。
全文提供:Bunkamuraギャラリー
会期:2013年4月10日(水)~2013年4月21日(日) 時間:10:00 - 19:30 会場:Bunkamuraギャラリー
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最終更新 2013年 4月 10日 |