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角文平:NEST
展覧会
執筆: 記事中参照   
公開日: 2012年 1月 22日

角文平《人間の巣》 2010年 | h300×w500×d150mm 鉄、木 | Copyright © Bunpei Kado

角文平ほど明快な作品を製作するアーティストはあまりいないのではないだろうか。作るというよりも日常のものを組み合わせることが彼の製作である。モチーフは家、クレーン、お土産の大阪城や木彫りの熊、椅子に戦車。誰が見てもそれ以外の何物ではない。しかしそれら日常的なものがこの作家の手にかかるととたんに日常のものではなくなる。日常品の組み合わせというとロートレアモンの「手術台の上のこうもり傘とミシンの出会いのように美しい」という言葉を思い出すが、角の作品にはシュルレアリストたちのような彼らの「美しさ」の地平を目指す気配は全くない。もちろん現代でも多くの作家が異なる日常のものを組み合わせている。そして結果的には妖怪のようなボッシュの絵や百器夜行の絵巻に出てくるような異形のどろどろした変態が生まれる場合が多い。アニメーションや漫画などポピュラーカルチャーでも近年こうしたモチーフが現れることが多いようである。一方、角の作品はこれらの系譜とはまったく印象が異なる。ユーモアを感じると同時に、非常にさっぱりしている。例えば発芽のシリーズでは木彫りの熊、椅子、引き出し、ブラシ、とあらゆるものから芽が伸びてゆく。盆栽をモチーフとした作品では綺麗に送電線を支える鉄塔が松のようにゆがんで植木鉢から立ち上がっている。 それでは異形のものと角の作品の違いはどこであろう。シュルレアリストや異形のものを描く作家たちはその組み合わされた集合体としての像に美しさや恐ろしさを感じさせるのに対し、角の作品における組み合わせはどちらかというとモンタージュ写真のようである。組み合わせそれぞれから別な意味を引き出そうという作業のようである。例えば大阪城と戦車の組み合わせからは奇異な戦車という以上に、「大阪城」のもつ意味「お土産」の意味、「戦車」の意味「プラモデル」の意味、と作家は見る人間に意味を共用することもなく、まずそのユーモラスな姿で私たちをひきつけ、集合体のイメージの奇異ではなく、別のイメージや意味を想像するという余地をきちんと残してくれている。角文平は特異な作家だと思う。
(アートフロントギャラリー 近藤俊郎)

[作家プロフィール]
角 文平 Bunpei Kado

略歴・受賞歴
1978 福井県生まれ
2002 武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科金工専攻卒業
2008 武蔵野美術大学 パリ賞
2007 第10回岡本太郎現代芸術大賞展 特別賞
2006 第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展 特別賞
2005 第2回コンクリートアートミュージアム名古屋 佳作
2003 アートサイト小千谷2003 魚沼水産賞

主な個展
2011 ギャラリー・シュタイネ、長野
2010 「相席」 space・cafe ポレポレ坐、東京
2008 「ジオラマ」 メタルアートミュージアム光の谷 、千葉
2006 CUBIC GALLERY、大阪
2003 「SKY FISH in GARASHA」 Gallery+cafe 伽羅舎、東京
2002 GALERIE SOL、東京(\'03 \'05 \'07 \'11)

主なグループ展
2011 「コルーリさんの人形部屋」 間・Kosumi、東京
SICF12 SPAIRAL、東京
2010 屋上彫刻展「遊びと造形」出展作家展 玉川高島屋S・C、ROOF GALLERY、東京
「廃線の記憶」 ギャラリー・シュタイネ、長野
2007 第10回岡本太郎現代芸術大賞展 川崎市岡本太郎美術館、神奈川
「トロールの森2007」 善福寺公園、東京
CENTRAL EAST TOKYO 2007「NIGHT×GALLERY×STREET」 泰岳ビル6F、東京
デジタルアートフェスティバル東京2007 パナソニックセンター東京、東京
2006 第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展 川崎市岡本太郎美術館、神奈川
2005 第2回コンクリートアートミュージアム名古屋 名古屋国際会議場、愛知
2004 屋上彫刻展「遊びと造形」 玉川高島屋S・C、ROOF GALLERY、東京
「色」展 全羅南道玉果美術館、光州、大韓民国

全文提供:アートフロントギャラリー


会期:2012年1月7日(土)~2012年1月29日(日)
時間:11:00~19:00
休日:会期中 月曜休廊
会場:アートフロントギャラリー

最終更新 2012年 1月 07日
 

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